地価の変調 コロナ後見据えた対応を

西日本新聞 オピニオン面

 東京、大阪、名古屋の三大都市圏がけん引し、地方にも広がっていた地価の回復傾向にストップがかかった。日々の暮らしから社会活動、世界経済まで大きく揺さぶっている新型コロナウイルス感染症の影響だ。

 国土交通省が発表した今年7月1日時点の基準地価では、全用途の全国平均が3年ぶりに下落し、商業地の全国平均も5年ぶりに下落した。昨年、バブル経済の崩壊以来28年ぶりに上昇に転じた地方圏の商業地も再びマイナスに沈んだ。

 元気があるとされる地方4市(札幌、仙台、広島、福岡)でも、商業地の伸びが大幅に鈍化した。新幹線延伸を控えた札幌市や規制緩和で天神や博多駅周辺で再開発を後押しする福岡市は中心部の地価上昇が続くが、福岡市・中洲が横ばいとなるなど、これまでの勢いはない。

 地価は遅効性のある経済指標とされる。緩やかな景気回復を追い風に回復基調だった地価の変調は明らかだ。先行きへの警戒を強める必要があろう。

 コロナ後の社会の変化次第では、地価を左右する土地の需給構造が変わる可能性がある。テレワークが拡大、定着すれば、賃料が高い大都市中心部に広いオフィスを構える必要はなくなる。郊外や地方へ移転する動きが加速するかもしれない。

 渡航制限で訪日外国人客(インバウンド)が途絶え、その増加を前提としていた店舗、ホテル用地の需要は減退した。インバウンドの回復がいつになるのかといったコロナ後の社会を見通すことは難しいが、変化を見据えた対応が求められる。

 今回の基準地価の特徴は商業地、住宅地、工業地などの用途や、全国、三大都市圏、地方圏といった分類に関係なく、上昇幅は縮小、下落幅は拡大に転じたことだ。地価が下落した地点は全国で約6割に及んだ。

 調査地点には、毎年1月1日時点で調べる地価公示と共通の地点がある。それらの半年ごとの変動率を見れば、新型コロナが流行した後半半年に失速したことがはっきり分かる。全国平均で住宅地は1月1日までの前半は0・8%上昇し、それ以降は0・4%下落だった。商業地は前半2・5%上昇し、後半は1・4%下落した。

 感染対策である生活様式の変化も地価に影響を与える。乗客減でJRや大手私鉄が終電の繰り上げを検討中だ。コロナ禍による倒産、休業やテレワークの普及で、店舗やオフィスの需給バランスが崩れれば、地価をさらに押し下げる要因になる。

 不動産事業の収益低下が予想され、各地で進む再開発事業にも波及する。事業計画に無理がないか再チェックが必要だ。

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