分散避難先でハラスメントの恐れも ホテルや母子施設も選択肢に

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え(24)

 10月から二つの短縮電話番号の運用が始まります。全国共通の性被害相談窓口への番号#8891。そして、ドメスティックバイオレンス(DV)相談ができる番号#8008。

 被害相談を巡り、女性国会議員が問題発言をしたと報道され、肝心の取り組みがかすんだ感があるのは残念ですが、この短縮番号にかければ、自動的に発信地の都道府県の相談窓口につながる画期的な事業です。

 ただし、何より大切なのは被害の予防。災害時に避難所で性被害が起こりやすい状況があることは、以前の連載で説明しました。最近は自治体の担当者の意識も高まり、予防啓発ポスターが避難所などに貼られることも多くなりました。

 むしろ私は、新型コロナウイルス対策で推奨されている分散避難先で起こるセクシュアルハラスメントも心配しています。男性の防災専門家は分散避難先について、選択肢の比重を考えずに知人の家などと列挙していますが、配慮が必要なのです。私がホテルなどの宿泊施設を一押しするのはそのためです。

 今年の7月豪雨で福岡県大牟田市が、隣県を含めたホテルなどでの避難生活を認めたのは、画期的な出来事でした。調べてみると、新型コロナ対策だけでなく、ハラスメント防止になる安全な場所だと、自治体の男性職員の方もよく分かっておられました。

 今年は災害時の宿泊施設利用に国から補助金が出ました。今後の避難先は体育館などではなくホテルで、という動きにつながることを期待しています。

 ハラスメント相談の専門家から「性被害は、全く知らない者より、面識があり拒否できない近い関係性の中で生じ、継続してしまう」と教わりました。熊本地震の際に福岡県の親戚宅へ避難した10代の少女が性被害に遭い、加害者に2018年、有罪判決が出た事件は記憶に新しいと思います。

 台風シーズンが続く中、分散避難を検討されているご家庭は、そういった点も考慮して避難先を選定し、幼児期から思春期までのお子さんからは、女の子に限らず目を離さないようにしてください。

 小さいお子さんがいる場合、少し遠方になるかもしれませんが母子避難所も選択肢に入れてください。母子避難所を設置していない自治体もありますので、市民の側から要望してください。長崎県島原市では今月28日、社会福祉法人の児童養護施設を県内で初となる母子避難所に活用する協定が結ばれました。

 福岡県でも、県男女共同参画センターの「あすばる相談室」が女性の抱える問題のワンストップ窓口になってください、というエールと期待を込め、10月発行の情報紙「あすばる~ん」98号に寄稿しました。そちらもぜひご覧ください。(九大准教授)

 ◆備えのポイント 母子避難所の場所は事前確認しておきましょう。身近な通常の避難所はどこまで配慮されているか、以下の「あすばる」のチェックシートで点検してみましょう。https://www.asubaru.or.jp/download?file_id=201586

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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