「規模の予測もできない」予算膨張“青天井”…財政規律を度外視

西日本新聞 総合面 中野 雄策

21年度概算要求

 2021年度予算の概算要求は、7年連続で100兆円を超える見通しとなった。新型コロナウイルス対策として具体額を示さない「事項要求」も多く、歳出はさらに膨らみかねない。年末の予算編成に向けて財務省は圧縮を目指すが、コロナ禍で予算膨張に拍車が掛かり、財政再建は遠のいている。

 「コロナで見通しが見えない中でも、質の高い予算をつくっていきたい」。概算要求の締め切りを翌日に控えた9月29日。麻生太郎財務相は記者会見で、経済再生と財政再建の両立を引き続き目指すと強調した。

 菅義偉内閣発足後初めての予算編成とあって、デジタル化などの目玉政策に関する要求も並び、予算膨張が止まる気配はない。

 この要求額に基づいて財務省が査定で削り込むのが例年の予算の編成過程だが、今年は事情が異なる。新型コロナ対策で金額の提示を見送った省庁が多く、編成過程でさらに要求額が増える。財務省幹部は「異例の編成作業になる。今は、予算の規模を予測することもできない」とぼやく。

   ◆    ◆ 

 コロナ禍で迎えた今回の予算編成を巡り、新型コロナ対策などの「緊要な経費」を、上限のない別枠で計上を認めるようにした。

 これを受け、各省庁の要求は額を示さない事項要求が目立つ。経済産業省はコロナ対策に2219億円を計上したほか、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の強靱(きょうじん)化や耐久消費財の需要喚起策など6項目は事項要求とした。事項要求の内容や額について、同省幹部は「感染状況、マクロ経済情勢を見ながら固めたい」と説明する。

 ほかの省庁も、事項要求で予算の上乗せを目指すが、従来の事業の継続も多い。空き家対策国土交通省)や水道基盤強化(厚生労働省)など、コロナとの関連が疑問視される要求も見られる。

   ◆    ◆ 

 財務省内では、ばらまきへの懸念が強まっている。今後、要求を受けた事業の検討に入るが「必要性や有効性がない要求には予算は付けない」(幹部)と、予算の膨張をけん制する。

 背景には危機的な財政がある。20年度の歳出総額は、当初予算の約102兆円から約160兆円超に膨らむ見込み。コロナ対策で2度の補正予算を計上したためだが、その財源は借金だ。新規国債発行額は90兆円を超え、歳出総額の56%強を占める。

 国と地方の借金残高は20年度末時点で1182兆円と、国内総生産(GDP)の2倍超に膨らむ見通し。財政は既に「先進国最悪」(財務官僚)とされ、基礎的財政収支プライマリーバランス)を25年度に黒字化する健全化目標にはもはや現実味がない。

 一橋大の佐藤主光教授(財政学)は「予算編成のスタートラインとなる要求額が100兆円規模に達している時点で財政規律が失われている。事項要求が多いことで、予算が不透明にもなる。事業を新たに加える前提として、既存の事業を見直すべきだ」と指摘する。 (中野雄策)

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ