♪つぎの夜から 欠ける満月より…

西日本新聞 オピニオン面

 ♪つぎの夜から 欠ける満月より/14番目の月が いちばん好き。荒井由実さんの「14番目の月」。きょうは中秋の名月。旧暦8月15日の「十五夜」に当たる。ただし、暦と月の動きとのずれで、いつも満月とは限らない。今夜は満月の1日前、14番目の月だ

▼<この世をばわが世とぞ思ふ…>と詠んだのは藤原道長。この世界は私のためにあるようなもので、満月のように欠けたところは一つもない-と権勢の絶頂で

▼道長は晩年、重い病に苦しんだそうだ。藤原氏の栄華もやがては失われていく。盛者必衰の定めは歴史が示す通り。やはり、頂点の一歩手前くらいが良さそうだ

▼万葉の昔から月を愛(め)でてきた日本人。今も十五夜にはお月見の風習が残る。縁側にススキを飾り、団子や里芋を供えて月を眺める。すると、月にすむウサギが餅をつく姿が浮かび上がってくる気がする

▼所変われば満月の模様も。インドではワニ、モンゴルはイヌ、アラビアはライオンに見えるのだとか。欧州ではカニやロバ、本を読むおばあさん、横向きの女性、薪を担ぐ男性…。人々はそれぞれの文化や暮らしに根付いたものを月の陰影に見いだすのだろう

▼お月見には収穫の感謝や息災の願いも込められたという。今宵(こよい)は何を思って空を仰ごう。月の表に描きたいのは、コロナ禍で欠けた日常を取り戻した元通りの世界か。天気予報は晴れ。美しい14番目の月が見られそうだ。

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