「返事ができる」を目指して 連載・霹靂の日々【43】大島一樹

西日本新聞 くらし面

 オクサンの回復の度合いは、はたから見ると「ほとんど回復していない」ように見えることでしょう。意識レベルを専門的な言葉でいうと遷延性植物状態。目覚めてはいるけれど、外界に対する反応がとても鈍い状態です。くも膜下出血を発症した当初の、脳への広範囲のダメージを考えると、生きているだけで奇跡と言えるのかもしれません。

 しかし倒れたときからずっと見ている私は「ずいぶん回復してきているんだな」と感じています。視線も動きますし、私を見てもいます。またストレッチなどの際に「力を抜いて」と声をかけると力を緩めることも。看護師さんは、私が行くと「表情が柔らかい」とも話してくださいます。

 目指すのは返事ができるようになること。そうなると子どもたちも会いに行くモチベーションが高まるでしょう。時間がまだまだかかると思いますが、不可能ではないと考えています。

 今では母親となっている長女の成人式の日。式典が終わってから晴れ着姿の長女を久しぶりに連れて、病院に行きました。看護師さんや病院スタッフの方からお祝いの言葉や歓声をいただきつつ、オクサンと対面。もちろんひいき目だとは思いますが、返事ができないオクサンも内心喜んでいるんだなと感じました。

 その長女が着た晴れ着、オクサンも成人式で着たとのこと。そんな話を義母から聞き、なおいっそう感慨深い一日でした。 (音楽プロデューサー、佐賀県みやき町)

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