5~10人一度に分析 更迭恐れ緊張感も 中国・大連全市民PCRの舞台裏

西日本新聞 国際面 坂本 信博

 【北京・坂本信博】新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が7月下旬に発生した中国遼寧省大連市は、全市民を対象に延べ約730万人にPCR検査を実施し、8月30日に収束を宣言した。新型コロナの集団感染が最初に起きた湖北省武漢市に続き、世界で2例目の全市民検査にどう取り組んだのか。市の衛生当局が、海外メディアで初めて西日本新聞の取材に応じ、舞台裏を語った。

 市衛生健康委員会によると、市内の水産加工会社でクラスターを確認したのが7月22日。1時間以内に会社と従業員を隔離して濃厚接触者にPCR検査をし、その日のうちに周辺を封鎖。翌日から2日間で、同社がある湾岸地区の住民や一帯の労働者に加え、湾岸地区に乗り入れる地下鉄の沿線住民も一斉に検査した。

 その結果、感染経路不明者が多く、複数地域で同時多発的に感染者が出たことなどから、クラスター確認から4日後の26日に全市民検査を決めたという。

 以後8月2日までに、濃厚接触者の複数回検査も含め延べ733万1千人の検査を完了。医療スタッフや輸送要員など、延べ3万人余りが作業に従事した。

 町内会的役割を持つ「社区」ごとに市民を集め、のどから検体を採取。高齢者や乳幼児など外出が難しい場合は、医療スタッフが戸別訪問した。担当者は「自分や家族の命に関することなので、非協力的な市民はいなかった」と強調した。

 陽性の場合だけ、本人と社区に通知して再検査。感染が確定すると病院に搬送した。結果的に計118人の感染を確認し、うち26人は無症状だったという。

 733万人分もの検査を短期間に実施できたカギは「プール方式」にあった。市域を感染リスク低・中・高の3等級に分け、低リスクの地域では5~10人分を一つの試験管に混ぜて分析。陽性反応が出たら個別に再検査する手法だ。中リスク地域の住民は3回、高リスク地域の人には4回検査を受けてもらった。

 「最も難しかったのは検査に必要な物資の確保だが、クラスター発生に備えていたことが奏功した」と担当者は振り返る。6月に北京でコロナの集団感染が発生した際、大連市は緊急処置計画を策定。大量の検査キットや90日分の医療物資を確保していたという。

 政治の影もうかがえる。習近平指導部は2月、被害が最も深刻だった湖北省と省都の武漢市のトップを事実上更迭。4月にも習国家主席が、コロナ対応について「一部の共産党幹部が能力不足を露呈した」と非難した。「感染が広がれば地元政府の幹部が更迭される」(外交筋)との見方は根強く、大連市も行政トップの緊張感が異例の措置につながったとみられる。

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