高い支持率背景に政治力誇示? 菅首相、異論封じへ介入

西日本新聞 総合面

 政府が日本学術会議の新会員候補6人の任命を見送った問題で、菅義偉首相は2日、官邸で記者団の呼び掛けに応じたが、歩きながら「適切に対応した」と述べただけで、詳細な説明を拒んだ。複数の関係者によると、任命の「選別」は安倍政権下で準備が進められていた。「前例主義の打破」を掲げる菅氏が高支持率を背景に、自らの政治力を誇示したとの見方もある。

 「安倍政権の方針を引き継いだ。改革の姿勢を継承するのが菅政権だから」

 菅氏は2日、周囲にこう語り、批判されるのは心外との様子だったという。加藤勝信官房長官は記者会見で「政府の判断を変えることはない」と断言し、6人の見送りを堅持する姿勢を強調した。

 任命されなかった6人には、「共謀罪法」や安全保障関連法など安倍政権の目玉政策に異を唱えた学者が含まれる。ただ、これまで政府は学術会議自体を「大した影響力はない」(政府関係者)とみて、新会員の推薦を受け入れていた。

 官邸筋によると、任命見送りが具体化したのは、安倍晋三前首相が辞任表明した8月末だった。「安倍氏は批判的な学者の推薦がどうしても許せず、任命見送りの道筋を付けなければ辞められないと思ったのではないか」と政府関係者はみる。

 一方で、政府高官によると、軍事応用可能な基礎研究への防衛省の助成制度について学術会議が批判した翌年の2018年には、菅氏も同様の問題意識を持っていたという。

 自民党総裁選から「前例にとらわれず改革を進める」「方針に従わない官僚は異動してもらう」と繰り返してきた菅氏。「任命見送りは抵抗勢力に力を見せつけることになる」。別の関係者は、菅氏の狙いを代弁する。

 ただ、そこに学問の自由を侵すとの意識は薄く、与党からも疑問の声が上がる。自民党の世耕弘成参院幹事長は「政府は学術会議サイドと丁寧に対話すべきだ。学者が自由に意見を言うのは尊重しなければならない」と苦言。公明党の石井啓一幹事長も「できるだけ丁寧に説明してほしい」と注文する。

 野党は「学問の自由に対する国家権力の介入だ」(立憲民主党の福山哲郎幹事長)と徹底追及の構え。官邸関係者は「政権発足早々、野党に攻撃材料を与えてしまった」と表情を曇らせる。

(東京支社取材班)

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