涙が止まらない、物を壊す…被災児童のSOS 熊本で寄り添う認定NPO

西日本新聞 社会面 四宮 淳平

 熊本県南部を襲った豪雨は多くの家屋に被害を与え、子どもたちにも過大なストレスをもたらした。涙が止まらない、食事の量が減る、物を壊す…。認定NPO法人「カタリバ」(東京)は、そうした子どもたちのSOSに耳を傾け、居場所を提供してきた。避難所の一角に預かり場所を開設したのは、7月4日の豪雨発生から5日後。発生から3カ月を迎える中、今も子どもたちの目線に優しく寄り添い続けている。

 9月中旬、熊本県球磨村に建てられた仮設住宅。集会所に十数人の子どもが集っていた。「外で鬼ごっこをしよう」「今日はここまで宿題をする」。カタリバのスタッフや地元大学生らボランティアと触れ合い、それぞれの時間を過ごす。今でこそ笑顔が多いが、被災直後は様相が異なった。

 避難所となった校舎や施設の部屋に子どもたちを集めると、遊ぶボールを誰が使うかでけんかが起き、贈られたおもちゃがすぐに壊されるなどトラブルが頻発した。スタッフの坂本紫織さん(26)は将棋で遊んだ際、「家でルールを復習してくるね」と口にすると、ある子の反感を買った。「家って言葉を使わないで。僕たちにはないんだから」

 別の子は、日増しに激しく泣くようになった。「そこどいて」。周りのそんな一言さえも号泣につながった。坂本さんが話を聞くと、「なんで毎日、こんなにつらいことが続くのか分からない」。自宅を離れ、避難所で暮らすストレスに心は悲鳴を上げていた。

 カタリバは、休校中は毎日、学校再開後も土日や夜に預かり場所を開設し、遊びを通じて子ども同士をつなげた。深夜、眠れずに避難所内をうろつく子の話にも耳を傾けた。現地責任者の井下友梨花さん(32)は「毎日ミーティングを開いて、言葉にならない子どもの感情を受け止めるよう心掛けた」と話す。

 学校の再開や仮設住宅の整備と復旧が進む中で、子どもたちの心は次第に落ち着いていく。新型コロナウイルスの影響で炊き出しが制限された避難生活。冷えた弁当が毎食続き、食が細っていった子は学校給食が始まると、「その日の給食」をひたすら話題にした。温かい食事は、心にも栄養を与えていた。

 東日本大震災を機に、カタリバは熊本地震などの被災地で子どもの学習支援を担ってきた。過去にカタリバでの活動経験があり、熊本県内に住んでいた井下さんと坂本さんは急きょ、スタッフとして今回の支援拠点を立ち上げた。

 9月は人吉市と球磨村の計2カ所で週末の日中に預かり場を開設。ボランティアによるウクレレ演奏や体を使って一緒に遊ぶなど、1日に計30~50人が利用した。最大3カ所あった預かり場所は10月から人吉市内の1カ所になったが、これからも丁寧に見守っていくつもりだ。

(編集委員・四宮淳平)

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ