「団塊ボーイの東京 1967-1971」矢野寛治著

西日本新聞 北里 晋

 団塊ど真ん中の著者は、最近還暦を迎えた私のちょうどひとまわり上の世代に当たる。著者が中津から上京し学生生活を送った吉祥寺は私が下宿していた阿佐谷と同じ中央線沿線。大ざっぱにいえば、バブル前の東京の街自体にそう大きな違いはなかろう。

 だが、学生生活の中身は決定的に違う。学生運動にこそ距離を置いた著者がのめり込んだジャズ喫茶、テント芝居、雀荘、任侠映画といった文化体験は、遅れてきた私たちの世代から見れば、失われた無頼の輝きがある(著者は格好つけていただけと自嘲するが)。

 筆名・中洲次郎の著者による昔の映画や音楽、文学の話は、その克明な記憶力にいつも驚かされる。この本を読んでその秘密が少し分かった。著者は仕送りを受ける条件として、週一の手紙を母親に送る約束をしていたという。だからメモ魔なのだ。そこは確かに無頼っぽくない。 (北里 晋)

 「団塊ボーイの東京 1967-1971」矢野寛治著(弦書房・1980円)

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