「あぁ、その日? 俺はいいけどハエがダメ」…

西日本新聞 オピニオン面

 「あぁ、その日? 俺はいいけどハエがダメ」。この川柳、何のことかと思うが、遺伝学などの研究者が、自分の都合よりも実験用のショウジョウバエの生活リズムを優先してしまうことを詠んだ句だという

▼講談社ブルーバックスは最先端の科学を紹介する新書シリーズだ。そこから先月出版されたのが「さいえんす川柳」。科学機器・試薬販売会社が2013年から実施している人気イベント「川柳 in the ラボ」の傑作をまとめた

▼大学や企業の理系研究者が、ラボ(実験室)で日々感じる喜び、悲哀を込めた句を投稿した。「顕微鏡の丸椅子つなげ仮ベッド」。あるある、とうなずく研究者も多かろう

▼今週はノーベル賞ウイーク。今年も日本人受賞者が出るか、と期待が膨らむ。その一方で過去の受賞者から苦言が相次ぐ。最近の日本の科学研究を取り巻く環境が、短期的な成果を求め、基礎研究を軽視する風潮への批判だ

▼こんな句も載っている。「基礎研究『役に立つの?』は禁句です」。2016年の医学生理学賞を受賞した大隅良典氏が「社会はゆとりを持って基礎科学を見守ってほしい」と語ったのを思い出す

▼削られる予算、旧式の実験機器、成果主義の圧力-そんな中で、明日の大発見を目指して実験を繰り返す研究者たち。そんな彼ら彼女らにエールを送りたくなる。厳しい研究環境をなんとかしてやれないものか、とも思う。

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