ハンドメード用の「着物ヤーン」って何? 不用品から新素材を開発

西日本新聞 くらし面 四宮 淳平

「着物ヤーン」を発売 藤枝瀬里子さん(41)に聞く

 各家庭に眠る着物を集め、縫い目をほどいて反物に戻し、数センチ幅のひも状に切る。この新たな素材を「着物ヤーン」と名付け、手工芸用に販売している。ヤーンは英語で糸の意味。事業化は困難の連続だった。

 香川県の高校を卒業し、東京女子大に進学。東京の証券会社を経て、2003年に縁のあった福岡市に移住した。福岡では地域活性化のイベント企画会社などに勤めた。その後、個人事業主として働きながら「女性用の下着を作りたい」と思い立つ。ぴったりと合う下着探しに苦労し、同様の悩みを抱える女性もいるだろうと考えたからだった。

 調べると、女性用の下着を作る工場は北陸地方に多い。でも福岡を離れたくはない。そこで「本社は北陸、福岡に支社」という企業であれば業態を問わず、新規事業の提案書を送り電話を入れた。

 30社、40社と続けても好感触が得られない頃、石川県に本社があり、葬儀用品の製造販売を手掛ける「三和物産」福岡支社の入社面接を受けた。募集は営業職だったが、構わずに新規事業をアピールした。数日後に連絡が入り、石川県の本社へ。新規事業創出に苦戦していた同社が戦力として迎えてくれることになった。ただ、女性用下着は「会社のブランドとそぐわない」ため、一から新規事業を考えることになった。

 18年4月に入社した後、その種が見つかる。帰省時に母が不用の着物を裂いていた。聞けば祖母の着物がたくさんあるという。「これはハンドメードの素材になる」とひらめいた。

 たんすにしまわれたままになっている着物は多い。集めるのは比較的容易でも、加工を担う工場探しには苦労した。「九州内で声を掛け尽くし、北上しながら東海地方まで広げた」。結局、福岡県内の工場に決まり、同年10月の発売にこぎ着けた。三和物産が設立した新会社「リクラ」で事業を担っている。

 入社と同時期に入学した事業構想大学院大(東京)福岡校での授業の内容に加え、教員や院生たちの助言も力になった。「自分のやり方が間違っていないか、常に確認できた」。ヤーンを使ってくれる作家も現れ、各地で販売会やワークショップを開いている。

 「不用なものでも、手を加えることにより誰かに必要なものにできる」。紆余(うよ)曲折を経てきたからこそ、情熱を注げる一つの信条にたどり着けたと今は思える。 (編集委員・四宮淳平)

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