九州工業大「超小型人工衛星」完成、来年中の打ち上げを目指す

西日本新聞 北九州版 古瀬 哲裕

九州工大の趙教授「根底から生活変える可能性も…」

 九州工業大(北九州市戸畑区)がフィリピン、パラグアイの研究機関などと共同で開発し、来年中の打ち上げを目指す3基の超小型人工衛星が完成した。米国の調査会社の調べで、九工大は大学や研究機関では小型衛星の打ち上げ実績で「世界一」とされる。どんな分野で活用し、今後、どんなことができるようになるのか。開発をまとめる趙孟佑(ちょうめんう)教授(57)に聞いた。

■虫の分布調査

 今回は1辺約10センチ四方、重さ約1・2キロの衛星を打ち上げ、中南米で死者が多い感染症「シャーガス病」を媒介する虫「サシガメ」の生息分布の調査に利用する。

 虫の調査に衛星をどう使うのだろうか。

 趙教授は「データの内容によっては衛星を利用した方が、地上に通信網を作るより効率的」と話す。

 衛星が担うのは地上に設置した虫取り機から、捕まえた数量などのデータを自動的に収集する作業。衛星を経由して地上のアンテナで受け取って処理すれば、分布が推測できる。

 衛星を利用すれば携帯電話の電波が届かない砂漠や山岳などのへき地からでも容易に情報を集められるという。

■ひらめき形に

 今回の調査目的はパラグアイ側から提案があり、3年程度で打ち上げが実現する見通しだ。

 「とにかく安く、早く打ち上げる。ひらめきを形にするのに、あまりに時間がかかってきた」。趙教授は、今後の課題をこう語る。

 国家主導で造る衛星は高性能だが非常に高価だ。しかし、目的が限定される超小型衛星にそこまでの性能は不要だという。

 衛星は接着剤や太陽電池パネルを除く主要な部材は通信販売などで入手した市販品を使った結果、材料費が1基300万円程度と、5年ほど前の半額以下に抑えることができた。

 今回はさらに接着剤を市販品で代替できるかを試験する。宇宙での極端な温度変化に耐える特殊な性能が求められる接着剤は1キログラムで約50万円。だが市販品なら1キロ数千まで価格を下げられ、調達も簡単だ。

■広がる可能性

 次の研究課題は、何だろうか。

 趙教授は一例として「コンステレーション」を挙げた。同じ目的を持った衛星を多数打ち上げてネットワークをつくるもので、スマホなどの測位に欠かせない衛星利用測位システム(GPS)もこの一種だ。

 海外では既に小型衛星のコンステレーションを使ったビジネスも生まれている。超小型衛星の価格をさらに下げることで農漁業や土地調査など幅広い分野に新事業が生まれる可能性があり、衛星活用のアイデアを掘り起こすことが大きな課題だという。

 趙教授は「宇宙でしかできないデータ収集が、私たちの暮らしを根底から変えるかもしれない」と期待を込めた。 (古瀬哲裕)

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