続く逆境 あまおうに懸ける 豪雨被災・久留米市のイチゴ園

西日本新聞 社会面 岩尾 款

コロナで客減少、2年連続の浸水

 筑後川流域が浸水した7月の豪雨から3カ月。福岡県久留米市三潴町の観光イチゴ園「いちごファームきらら」を営む田川泰也さん(42)は、浸水で壊れた機械を買い直すなど負担を抱えつつ、今冬の収穫に向け新たに苗を植えた。浸水被害は2年連続。新型コロナウイルス感染拡大による来客減など逆境続きだが、4年前に一から築き上げた農園の復活を誓う。

 田川さんは、タイヤ販売店の店長として鹿児島県や北九州市などで売り上げを伸ばした。会社の経営形態が変わったのを機に2016年、祖父から継いだ50アールの農地を元手に就農した。

 品目は16年連続で販売単価が日本一で、売り上げを伸ばしやすい「あまおう」を選び、JAの紹介で師匠を探した。師匠の指導は「毎日、何をしたかメモしろ。それを来年自分でやれ」だけ。翌年は師匠の下で自力栽培に挑戦。平均を上回る10アール当たりの収入を上げ、JAイチゴ部会から「新人賞」をもらった。

 独り立ちし、昨シーズンから自分の農地を観光農園化。今季はハウスを3棟増やす予定だったが、コロナ禍でイチゴ狩り客はゼロに。追い打ちをかけるように7月7日、近くの山ノ井川に注ぐ支流があふれハウスは約60センチ浸水。4万株の苗の半分が水没した。

 川は昨夏も2回あふれ、ポンプや、光合成を促す二酸化炭素(CO2)発生器など200万円近い損害を受けた。「昨年入れた新品が、また駄目になった。もう笑うしかないけど、いつまで笑っていられるか」

 これまで、不登校の生徒や人生に悩む女性を農園の働き手として受け入れてきた。田川さん自身が「昔はいろいろあったから」、黙々と働く農作業が自分に向き合う機会になると分かっているからだ。そんな心根を知る仲間が、新しい苗を融通してくれた。ネットで知り合った滋賀県の農家は、田川さんを支援するクラウドファンディングの企画を代理で始めた。

 「おいしさの乗りが違う」と土づくりにこだわってきたが、泥水に漬かった土は肥料が流れた。洪水の後始末に追われ、土壌消毒には手が付けられないまま。水没を免れ、新たに植えた苗が赤い実を付けるのは12月。「本当に実るのか」と不安も頭をよぎる。それでも、豪雨を乗り越えた苗の力を信じている。 (岩尾款)

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