家政婦に見た人気の訳 藤崎真二

西日本新聞 オピニオン面 藤崎 真二

 パソコンで「かせいふ」と入力して変換しても「家政婦」としか出てこない。しかし9月に終了したテレビドラマ名は「私の家政夫ナギサさん」(TBS系)だ。高視聴率を獲得し、話題を呼んだ。

 一人暮らしの若い女性が大森南朋さん演じる家政夫ナギサさんを雇うことになる。当初は困惑するが、家事を完璧にこなすナギサさんを頼るようになり、安心感から恋心も…というストーリー。

 その少し前には「家政夫のミタゾノ」(テレビ朝日系)の第4シリーズがあった。女装した家政夫の松岡昌宏さんが、派遣先の家庭の秘密を暴いて崩壊させ、再生に導く展開は見ものだった。

 東日本大震災後の2011年秋には「家政婦のミタ」(日本テレビ系)。松嶋菜々子さんが決して笑わない家政婦を演じた。震災後を意識してか、本人の隠された過去も含め家族の絆がテーマだった。

 家政婦ドラマの元祖といえば、19年1月に亡くなった市原悦子さんの「家政婦は見た!」(テレビ朝日系)だろう。松本清張原作の「熱い空気」を初回に、その後オリジナル脚本で08年までの25年にわたり、全26作品が放映される人気シリーズとなった。

 その派遣先は政治家や高級官僚などの家庭。ふるさと創生資金で掘った温泉を巡る町の派閥争いなど世相を反映、風刺しつつ、権力や財力のある家庭の私欲にまみれた闇をのぞかせた。柱の陰に半分隠れる市原さんの妙味ある演技に視聴者は留飲を下げた。

 「庶民の代表を心してやってました」。市原さんは著書でこう語っている。「風邪をひくと日当が出ない。そんな存在が、相手をやり込めて去っていく痛快さは市原さんにぴったりだった」。彼女の多くの舞台に20年以上関わった福岡市のプロダクション社長は思い返す。演技後に「私、偉くなかった?」と周囲に尋ね、決してそう見えないよう気を付けていたという。

 同様に庶民の意識を映したのが「ナギサさん」ではなかったか。家事=女性という凝り固まった価値観による窮屈さから多くの働く女性が少しでも解放されたらという思いで制作した、とドラマの作り手は説明している。家事が不得意な女性を家政夫が支えるストーリーは、庶民の生き方や働き方が多様化する中で、その気持ちを代弁したからこそ、共感を得たのだろう。

 ナギサさんは「お母さんになるのが夢だった」と語る。ナギサさんの新婚家庭に市原さんの家政婦が派遣されたら-。「自由な時代になったのね、うふふ」とでもつぶやくだろうか。 (論説委員)

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