引きこもり、周囲はどう接したらいい? 「程よい距離」を

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

引きこもり講演会 (上) 「KHJ家族会」

 社会と交わらずに家で過ごす引きこもりの人は、国の調査で100万人を超えるとされる。本人の年齢は高くなり、苦しむ期間も長くなっているが、自分らしい生き方を見つけて行動を起こすのは難しいという。周囲はどう接したらいいのか。家族の会や支援団体が9月に福岡県で開いた会合を、2回に分けて報告する。

 NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」(東京)は、福岡県支部「福岡楠の会」と合同で、支援者向けの研修会を同県春日市で開いた。連合会は1999年に発足した全国組織。研修会では、本人のニーズに長い目で柔軟に対応することと、身近な家族を支えることが強調された。

 講演した日本福祉大の竹中哲夫名誉教授は、主に40代の当事者に接してきた。家の中での暮らしを尊重した上で、よりよい人生を送れるよう支える考えを示した。

 接し方は個々人で異なるという。社会参加を望む人は、ゆっくりとその道を進むよう寄り添う▽社会参加と今の生活とで葛藤する人は、どちらの道も選べるよう支援する▽当面、周囲との関わりを避けたい人は、納得できる生き方をともに考える-。柔軟な向き合い方が必要のようだ。

 ここで、竹中氏は30代半ばの男性の例を挙げた。ようやく自宅訪問を許されたので向かうと、昼も部屋のカーテンを閉め切っている。家は平屋。男性は「外の人に見られるのが嫌だから」と暗がりの中で言った。

 今後のことを話しても乗ってこない。「じゃあ、カーテンを10センチだけ開けてみない? 外からは見えないはず」。そう言って家を後にすると、次の訪問時に拳の大きさほど開いていた。

 「本人の気持ちを尊重し、一緒に支援目標を決めることが大事。それはカーテンの例くらいゆっくりした話」。少しずつ、緩やかに今の生活より自由になってもらうための寄り添いを求めた。

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 引きこもりの状態が長く、年齢が高くなった人の対応はなお難しい。親や支援者は、本人とどう関係を築けばいいのか。

 竹中氏がまず挙げたのは、親子関係の「程よい距離」。本人は自立や就労に触れられたくない。だから親もその部分は避け、批判や説得を控える。「本人と親は関係がうまく形成されていないことが多い。適正な距離があれば支援が進みやすい。近づきすぎず、離れすぎない、が大切」

 本人が相談機関を訪れることは少ないため、親が子どもと支援者を仲介する方法もあるという。

 支援者の「文通したい」「訪問したい」という意思を親が子どもに伝える。子どもが反応すれば、親がそれを支援側に伝える。これにより、面接や訪問を受け入れることもあるとした。

 相談機関や自宅訪問、当事者の居場所を手掛ける支援者にも求められることがある。「本人の思いに関心を持ち、『あなたのことを教えてください』という立場で接すること」

 支援のゴールをどこに置くかは難しく、本人の状態によって決めるしかない。就労による自立だけでなく、自分らしくあるための「生き方支援」を重視する考え方もある。竹中氏は「急がず、諦めず、本人と対話しながら支援を継続する。そうすると話が前に進むことがある」と結んだ。  (編集委員・河野賢治)

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