学術会議の推薦 首相は拒む理由の説明を

西日本新聞 オピニオン面

 日本学術会議が推薦した105人の新会員候補のうち、なぜ6人だけを任命しないのか。その明確な理由を菅義偉首相が説明しない限り、この問題は解決しないと心得るべきだ。

 菅首相は内閣記者会のインタビューで、この6人の任命を見送った問題について「法に基づいて内閣法制局にも確認の上で任命している」「総合的、俯瞰(ふかん)的活動を確保する観点から判断した」などと述べた。

 学術会議が会員候補を推薦して首相が任命する現行制度が導入されて以降、推薦候補が任命されなかったのは初めてだ。

 今回の6人は安全保障関連法や特定秘密保護法といった政府の法案や政策に批判的な立場を取っていた。政府に盾突くような学者は公職に任命しない。そんな姿勢を誇示しようとしたのではないか、という疑問が浮かぶのは当然だろう。

 しかし、過去の政府提出法案に対する6人の立場と今回の任命拒否の関係について首相は「(判断に)一切関係ない」と断言した。そうであるなら、なおさら任命を拒んだ理由を説明すべきはずなのに、首相は「個別の人事に関することはコメントを控えたい」と口をつぐんだ。

 これでは、かえって疑念は深まるばかりである。

 さらに気になるのは、首相が「任命する責任は首相にある。推薦された方をそのまま任命する前例を踏襲していいのか考えてきた」と述べたことだ。今回の任命拒否は唐突な判断ではなく、以前から問題意識を持っていたと言いたいのだろう。

 この首相発言を裏付けるように、「首相に学術会議の推薦通り会員を任命すべき義務があるとまでは言えない」とする文書を、内閣府が2018年11月時点で作成していたことが判明した。この文書には「首相は人事を通じた一定の監督権行使ができる」とも明記されている。

 こうした法律や制度を巡る実質的な解釈変更が政府内でいつの間にか行われ、何らかの問題が発覚して初めて国民が知る-という現実に驚くばかりだ。

 学術会議の会員選考について政府は1983年の参院文教委員会で「形だけの推薦制であって、推薦していただいた者は拒否しない。形だけの任命をしていく」と答弁していた。

 こうした従来の政府見解や国会答弁との整合性も、政府はきちんと説明してほしい。

 今回の首相による任命拒否の理由は、学術会議だけでなく国民も知りたいはずだ。それをまともに説明できないというのであれば、拒否を撤回して推薦通りに任命するしかあるまい。

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