〝隠れバイデン〟信じたい わずかな変化に期待込め 支持層切り崩す

混沌ラストベルト~米大統領選直前ルポ(4)

 トランプ大統領の支持者が長蛇の列をなしていた。9月22日、東部ペンシルベニア州。鉄鋼の街として栄えたピッツバーグの空港の一角で、数千人規模の選挙集会があった。

 開始4時間前にもかかわらず支持者が再選を願う「あと4年」コールを連呼。通り掛かった車からは賛意を示すクラクションが鳴り響く。1週間前から始めたルポ取材で、トランプ氏の集会に遭遇したのはこれが3度目。どの会場も異様な熱気に包まれていた。

 会場に、中南米系を意味する「ラティーノ」と書かれたTシャツを着た女性(36)の姿があった。一般的に中南米系は移民政策に寛容な民主党支持者が多い。声を掛けると「トランプ支持のラティーノは増えている」と返ってきた。

 民主党のバイデン前副大統領が勝利すれば、党内で台頭する左派の圧力を受けて左傾化すると主張し「『米国が社会主義を導入する』と、キューバなどから自由を求めて来た人たちが恐れている」と話した。

 トランプ陣営や共和党は中西部などの激戦州で「民主党は過激な社会主義」との訴えを、莫大(ばくだい)な広告費を投入して喧伝(けんでん)する。実際、中南米系のトランプ氏支持率が前回選挙時より上昇している州がある、とのデータもある。

   ★    ★

 「トランプの主張は恐怖をあおるための大うそ。それでも経済政策がいいからと支持するラティーノはいる」。翌日、州東部ヘーズルトンでスペイン語新聞を発行するペルー移民のアミルカ・アロヨさん(71)に女性とのやりとりを伝えると、深いため息をついた。

 街には物流倉庫が集まる産業団地があり、職を求めて移住する中南米系が急増。人口約2万5千人の半数以上を占め、街中にスペイン語が飛び交う。

 地域を見続けて30年。今や中南米系が街を支えていると自負するアロヨさんだが、大統領選に話が及ぶと顔をしかめた。前回、中南米系の投票率は全米で5割に届かず、選挙への関心の低さから「眠れる巨人」とやゆされるからだ。

 母国で圧政に苦しんだ経験から政治への不信感が根強いなど事情はさまざま。とはいえ、トランプ氏は移民の流入に厳しく、それに乗じた移民排斥のヘイトグループ(憎悪団体)が街に出没することもある。「再選されれば、それこそ私たちへの圧政につながりかねない」と危惧する。

 前回、トランプ氏は州で勝利したものの僅差だった。「反トランプ」の中南米系票が少しでも増えることで結果が変わるかもしれない。アロヨさんは「今こそ起き上がってほしい」と同胞の改心を願う。

   ★    ★

 接戦が予想される今回の大統領選。互いの支持層のわずかな変化が勝敗を左右するとされ、バイデン氏支持の市民団体は前回、トランプ氏支持に回った女性層などの取り込みに必死だ。中には岩盤支持層を切り崩そうとする動きもある。

 「迷っているのはあなた1人ではない。良心に従って投票しよう」。9月20日、中西部ミシガン州グランドラピッズで100人余りを前に、キリスト教福音派のダグ・パジット牧師(54)が声を張り上げた。

 人工妊娠中絶に強く反対する福音派はトランプ氏の有力な支持基盤であり、パジット氏は異質の存在だ。激戦州をバスで巡り、バイデン氏への投票を訴える。

 「移民を阻止するため国境に壁を造るような分断は『神の意志に反する』と内心、思っている人はいる」と信じるが、そんな信者を見つけるのは「雲をつかむ」ようなものだという。

 「胎児だけでなく、移民や黒人も、みんなの命が大切なはずだ」。会場にはトランプ氏の移民政策や人種問題への取り組みに憤る女性(61)がいた。彼女が通う教会ではトランプ氏を支持するのが当然との雰囲気に覆われ、誰も批判を口にできない。「本当に勇気づけられた。私と同じように“隠れバイデン”がいると信じたい」。そう言って、会場を後にした。

 6日後、ペンシルベニア州ハリスバーグであった小規模集会にも熱心に耳を傾ける参加者の姿があった。パジット氏は言う。「数%が動けばトランプは負ける。自信があるとは言えないが、手応えはある」

関連記事

PR

開催中

だざいふ子ども絵画展

  • 前期2021年11月11日(木)~23日(火・祝)、後期27日(土)~12月10日(金)
  • 太宰府市文化ふれあい館 エントランスホール
me music マリンワールド海の中道 外洋大水槽前から

PR