自責や罪悪感…戦争で精神障害、日本兵も 療養中に死亡1000人超

西日本新聞 一面 久 知邦

識者「被害直視を」

 日中戦争や太平洋戦争の過酷な体験で精神障害を発症し、療養中に亡くなった元軍人・軍属が少なくとも千人に上ることが、厚生労働省の保管する55年分の統計から分かった。約7割は入院したまま死亡していた。終戦直後の死亡者や当時、日本の統治下にあった台湾や朝鮮半島の人たちは含まれておらず、実際にはもっと多かったとみられる。専門家は「社会から隔離され、家族と縁が切れたまま亡くなった人もいる。戦中戦後も顧みられなかった被害を見つめ直す必要がある」と指摘する。

 戦争で心身に障害を負った元軍人・軍属は、1963年に公布された戦傷病者特別援護法により、日本国籍を持つ者は公費で治療が受けられるようになった。厚労省は翌年から統計を作成しており、64~2018年度分の中から精神障害に関するものを集計した。

 それによると、療養中に亡くなった元軍人らは1006人に上る。約7割に当たる686人が入院中、320人が通院中に死亡した。病死や自殺など死因についての情報は統計にない。治癒したのは175人にとどまった。

 療養者が最も多かったのは78年度で1107人。九州7県では都道府県別の統計を取り始めた97年度が最多で72人。これ以降は減少を続け、18年度には九州に治療を受けている人はいなくなった。全国では戦後75年を迎えた今も、島根県の1人が療養中だ。

 発症経緯なども統計に情報がなく分からない。ただ、精神障害になった日本兵の研究をし追跡調査もした埼玉大の清水寛名誉教授によると、戦闘への恐怖やそれに伴う疲労、上官からの私的制裁のほか、部下を死なせた自責の念や加害による罪悪感から発症するケースが多いという。

 清水名誉教授は「名誉の負傷とされた身体の障害と違い、精神障害は個人の弱さのせいにされた。自衛隊の活動の幅が広がり海外派遣が増える今こそ、戦争が日本兵の心に与えた深刻な影響に目を向けるべきだ」と話す。 (久知邦)

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