「まさか」ノーベル化学賞の源流、福岡にあった 原点発見の功労者

 今年のノーベル化学賞につながる原点を発見した「功労者」は、九州大大学院農学研究院の石野良純教授(63)だ。約30年も前に「ゲノム編集」技術の実現に欠かせない特殊な遺伝子配列を大腸菌で発見した。石野教授は7日夜、福岡市西区の九大で会見し「ゲノム編集技術は画期的で革命。間違いなくノーベル賞の仕事」と称賛した。「ミスター・クリスパー」とたたえられる石野教授の論文は、スウェーデンの王立科学アカデミーの発表文でも紹介された。「クリスパーの発見者と言われ、非常に光栄です」。一層声を弾ませた。

 「独創性、遊びの中から」

 今年のノーベル化学賞は、生物の遺伝子を狙い通りに改変できる「ゲノム編集」を普及させた技術の開発者、米国のジェニファー・ダウドナ教授ら2人に決まった。34年前、この技術の実現に不可欠な発見をした九州大大学院農学研究院の石野良純教授(63)は九大での会見で「クリスパーの源流が日本にあると言ってもらえるのは非常にうれしい。興奮している」と喜びを語った。持ち前のこだわりがうずいて論文に明記した塩基配列の存在は、その後多くの研究者の目に留まり、世界的栄誉にまでつながっていった。

 石野さんは大阪大の研究員時代、指導教官の指示で大腸菌のDNAを解析。半年がかりで塩基配列を読み取り、一部に規則的な繰り返し現象があることを1986年に発見した。翌年に論文で報告。当時は生物学的に解明できず、考察部分で「何か意味がある」と記した。

 その後、米国留学を経て帰国した石野さんは古細菌の研究にのめり込み、後に「クリスパー」と名付けられる塩基配列の研究は続けなかった。2000年代に入って、DNAの研究が進み、石野さんの論文に注目が集まった。ダウドナ教授らが論文を発表したのは12年。石野さん自身は研究テーマを変えたことに悔いはなく「(自らの発見が)まさかゲノム編集という分野でこれほど盛り上がるとは思わなかった」と振り返る。

 高校時代、生物の教科書に載っていたDNAの二重らせん構造を見て感動した。研究員時代に塩基配列を初めて見たときも「規則正しく並んでいる姿に神秘性を感じた」。

 実は発見の際の研究で、大腸菌のDNAを全て解読する必要はなかった。「せっかくなら端から端まで調べたい」「何とかして分かりたい」-。科学者としての好奇心とこだわりが大発見に導いた。近年の研究では、決められたテーマをこなし、すぐに成果を求められがちだ。

 石野さんは言う。「初めは何に役立つか分からなくとも、研究にこだわり続けることが大切。独創的な研究は遊びの中で生まれるんです」

 会見で何度も口にしたのは「興奮」という言葉。研究半生を振り返り、こう結んだ。「いつも興奮してきたので満足しています」 (竹中謙輔、野村大輔)

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