障害ある人に出張ライブ、元教員の思い 11月に野外音楽祭

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

 外出機会が少ない障害のある人の自宅や施設、病院を訪れ、社会人音楽バンドの生演奏を披露しているNPO法人「カラフル・パレット」(福岡市東区)が11月、福岡県宗像市で「バリアフリー野外音楽祭」を開く。法人の理事長でボーカルの浅野多佳子さん(57)は同県立特別支援学校の元教員。「障害の種類が違うと、その子も家族も共に活動することが少ない。一堂に会して、思う存分楽しんでくれれば」。そんな姿をぜひ、一般の人にも見てほしいと願う。

 訪問先のステージは必ず、手作りの電飾で彩る。「皆さん、こんにちはー」。アップビートの伴奏に負けず、ひときわ声を張り上げ、浅野さんは登場する。

 歌謡曲、演歌にダンスミュージック…。障害者やお年寄りなど、聞き手からの事前の要望に応じた曲目で盛り上げていく。「その瞬間、自分たちの最高値を見せる」のがモットーだ。

周囲の目気にせず

 肢体が不自由な子ども、知的障害児の特別支援学校に9年ずつ在籍し、訪問教育も長く担当した浅野さん。ベースギターやバイオリンに親しみ、オフには仲間とヘビーメタルバンドを組み、ライブ活動もしていた。

 訪問での演奏は、教え子の外出が難しいことから思いついた。親たちは、大きな車椅子や寝台で移動する子は「物理的に無理」、知的障害があると「跳びはねるので周りの目が気になる」とこぼしていた。

 「それなら、いつも過ごす場所をコンサート会場にすればいい」。2013年、最初はボランティアサークルとして始めた。

体調が良くなった

 演奏者やスタッフは、別の仕事の傍ら、アマチュアとして活動する40代後半~60代前半のバンド仲間。毎回有志を募り、長いときは数カ月前から稽古する。

 音響や照明、着ぐるみや小道具も全て自費で持ち込み、合言葉は「居ながらにしてハウステンボス」。ドラムの響き、アンプから伝わる重低音…。生演奏の迫力に、寝たきりで表情の乏しい子も目をぱっちり開け、口元を緩ませる。「銀河鉄道999」に合わせて懸命に体を揺すっていた男児は、最後の1フレーズの歌詞をボーカルと「ぴったり合わせて」絶叫、やんやの喝采を浴びた。

 訪問を毎年依頼する家族や施設もあり、多いときは年間15カ所を回る。メンバーの個人負担だけでは続かないと考え、18年にNPO法人化。1回2万~3万円程度のギャラも設定した。

 「体調を崩していても訪問日にはすっかり良くなり、主治医を驚かせる子もいる」。音楽の力に、浅野さんは手応えを感じている。

家族同士も交流を

 今回、初めて企画した音楽祭は、浅野さんの「悲願」だった。

 知的障害のある卒業生から「肢体の不自由な人の車椅子を、一度も押したことがない」と聞き、ずっと気になっていた。「さまざまな障壁があるために簡単に外出できない困り事は同じなのに、家族同士のつながりが薄いから、その解消を訴える声が社会に届かない」ようにも映る。

 一方で、教え子たちを実際に連れていこうと打診したライブハウスやカラオケ店から「車椅子のお客は想定外」と断られたことも一度ではない。

 障害がある人同士、また障害がない人も同じ空間で楽しめる「場」があれば、分断も、偏見もなくしていくチャンスになると考えた。「車椅子は砂利とか少しの段差でも不便なんやね、知的障害の子はああやって体を揺らして喜ぶんやね、と、一緒に居れば、誰でも自然に分かっていくのでは」。知り合いの福祉事業所や企業、行政関係者の協力を得て、開催が決まった。

 浅野さんは今年3月、定年を前に教員も退職。「もっと活動に全力投球しよう」と決意した。音楽祭も「とりあえず5年」は続けたい。「自分たちが持続可能な活動を確立していけば、全国の津々浦々で、同じような取り組みが広がるかもしれない」-。そんな期待も抱いている。 (編集委員・三宅大介)

 バリアフリー野外音楽祭「パレットピクニック」 11月7日午前10時半~午後3時半、福岡県宗像市の「道の駅むなかた」芝生広場。複数の音楽バンドが生演奏を披露するほか、参加者でダンスを楽しむ企画も。地元の社会福祉法人さつき会主催の「リトルさつき祭り」と同時開催で、福祉事業所などのバザーもある。NPO法人「カラフル・パレット」は訪問演奏の依頼や活動の協賛企業も募集中。詳しくはホームページ「NPOカラフルパレット」で検索を。雨天時も開催する。

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