【動画あり】乗り鉄の憧れ…「日本一」の特急に乗ってみた 全区間413.1キロの旅

西日本新聞 中原 岳

 JR九州には、ある「日本一」の称号を持つ特急がある。博多-宮崎空港間を6時間前後で結ぶ「にちりんシーガイア」だ。走行距離は東海道線東京-岐阜間(396・3キロ)より長い413・1キロで、夜行列車を除く在来線特急では国内最長を誇る。列車に乗ることが好きな「乗り鉄」にとっては、まさに憧れの列車だ。思い切って、全区間を乗り通してみることにした。

 宮崎市のリゾート施設にちなんだ「にちりんシーガイア」は、博多発が毎日1本、宮崎空港発が同2本運行されている。今回選んだのは、宮崎空港発2本目の「にちりんシーガイア24号」。同列車は特急電車787系(6両編成)が使われ、普通車、グリーン車の座席の他に定員4人のグリーン個室が1部屋だけある。


「にちりんシーガイア24号」のグリーン車。3列のゆったりしたシートだ

 今回は大奮発して、グリーン料金5140円を払い、個室を予約した。ちなみに、1人でも4人でもグリーン料金は変わらないので、4人で使えば1人当たり1285円になる。利用するには、実際に乗る人数分の乗車券と特急券も必要となる。宮崎空港から博多までの乗車券は7500円、特急料金は1680円だ。

 午後5時すぎ、宮崎空港駅。にちりんシーガイア24号は、既にホームに入っていた。個室は1号車。室内には寝転がれそうなほど大きな3人掛けソファや、ゆったりした1人席、テーブルが備えられていた。温かみのある照明は「大人の旅」にふさわしい雰囲気だ。


787系特急「にちりんシーガイア24号」に1室だけ設置されている個室

 この個室を、推理小説「オリエント急行の殺人」の作者にちなんで「アガサ・クリスティの世界」と表現した人がいる。俳優の大泉洋さんだ。


グリーン個室には特急「つばめ」時代のロゴマークが残っていた

 大泉さんは1998年、北海道の民放が制作した人気番組「水曜どうでしょう」の企画で福岡県から鹿児島県に向かった際、当時運行されていた787系特急「つばめ」の個室に乗車。当時は4時間近くかかっていたが、「これは快適だよ。これだったら、鹿児島まで何でもないもん」と興奮気味に語っていた。「こんなに豪華な部屋を6時間も独り占めできるのか」。私も胸の高鳴りが抑えられなかった。


旅の始まりはJR宮崎空港駅。空港のターミナルと直結している

 列車は午後5時19分に宮崎空港駅を発車。宮崎空港を拠点とするソラシドエアの飛行機が駐機している空港がどんどん遠ざかっていった。

 南宮崎駅を出ると、大淀川に架かる長い鉄橋を渡って宮崎駅に到着した。同駅を発車すると、日豊線をぐんぐん加速。まもなく停車駅の案内放送があった。同駅より先の停車駅数は終点の博多駅を含めて27駅。放送は車内の説明や注意事項を含めて4分近く続いた。

 駅を発車すると、右手に高架橋が見えた。リニアモーターカーが走った「宮崎実験線」(全長7キロ)の跡だ。77年から96年まで走行試験が行われ、山梨リニア実験線に役目を譲った。今は軌道上に太陽光パネルが立ち並ぶ。


都農駅を発車すると、リニアモーターカーの宮崎実験線跡が見えた

 高架橋の周りには田畑やビニールハウスが広がっていた。のどかな風景の中をさっそうと駆け抜けたリニアモーターカーは、超高速の未来がすぐそこまで来ていることを予感させたに違いない。


日が暮れると、街明かりが車窓を彩った

 日が暮れ、宮崎県北部の延岡駅に着く頃には外は真っ暗になっていた。家々の明かりをさかなに晩ご飯。宮崎空港ではコンビニ弁当しか買えなかったが、ビールを片手に車窓を眺めれば、おいしさも増す。大分県に入り、佐伯、津久見、臼杵と停車。時折、海沿いを走り、港の照明がしっこくの闇に点々と浮かんでいた。夜汽車の風情をたっぷりと楽しんだ。

 午後9時前、大分駅に着いた。別のホームには、仕事や遊びの帰りと思われる人たちが列車を待っていた。そんな風景を個室のソファに寝そべって見ていると、妙な優越感があった。


午後8時53分、大分駅に到着。ホームでは、帰宅途中とみられる人たちが列車を待っていた

 大分駅を出てしばらく行くと、別府湾沿いを走った。右手前方には、海岸線に沿って別府市の街明かりが弧を描いていた。

 個室が快適すぎて、1時間ほど眠ってしまった。起きると、列車は福岡県豊前市のうのしま駅を出て、行橋駅に向かっているところだった。

 北九州市の小倉駅には午後10時29分に到着。日豊線と鹿児島線を直通する列車は、小倉駅で折り返す構造になっている。進行方向が変わり、博多駅に向かって逆向きに出発した。斜面地を住宅地の明かりが覆う同市八幡東区を通過し、八幡西区にある黒崎、折尾の各駅に停車。深夜帯に入り、駅の人影はまばらだった。


北九州市の小倉駅を発車し、紫川を渡った。車窓を彩る夜景も魅力の一つだ

 午後11時20分すぎ、車内放送が「まもなく、終点博多です」と告げた。豪華な個室とも、いよいよお別れだ。もっと乗っていたかったなぁ…。後ろ髪を引かれる思いで列車を降りた。

 今回乗った「にちりんシーガイア24号」は宮崎空港駅を出発後、程なくして日没を迎えたが、昼間の風景を楽しみたい人は、博多午前7時30分発宮崎空港午後1時20分着の「にちりんシーガイア7号」がおすすめだ。ただし、この列車にはグリーン個室がないのでご注意を。


にちりんシーガイア24号のルート

 

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ