「核のごみ」理解にあの手この手 教員に助成金、SNSで発信…NUMO

西日本新聞 総合面 山下 真

 原発から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)の最終処分場選定を巡り、北海道寿都(すっつ)町が9日に文献調査に応募し、近くの神恵内(かもえない)村も調査受け入れを表明した。応募は2007年の高知県東洋町以来で13年ぶり。事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)はこの間、地層処分の必要性を訴える「理解活動」を全国で続けてきた。学校の授業で取り上げてもらうため助成金を出したり、会員制交流サイト(SNS)を駆使したり…。調べてみると、あの手この手で広報戦略を進める姿が浮かんだ。

 NUMOは、文献調査に応募しながら反対運動が高まって撤回した東洋町の事例を踏まえ、住民への周知を図る草の根の「理解活動」を進めてきた。その中心が各地で開催するシンポジウムや説明会だ。地層処分の適地を示した「科学的特性マップ」を公表した17年夏以降では、全国で120回実施している。

 「理解活動」の裾野は広く、教員を対象にした支援活動、フェイスブック(FB)などSNSを通じた情報発信にも取り組む。詳細は周知されていないため、西日本新聞はNUMOに情報公開請求し、16~17年度の「授業研究支援」「FBサポート業務」などの内部資料を分析した。

 「授業研究支援」は、学校の授業で地層処分を取り上げてもらうため、全国研修会の開催や指導案の助言に当たる。教員らの研究会に、教材開発費や会合費など最大80万円を助成する内容だ。重視するのが助成金額。事業報告書では「先生ごとに見た時に、助成金額と授業数は強い相関関係にある」「研究助成が終わると授業実践が途絶えてしまう」と指摘、商品や賞金を提供する授業コンテストの開催を提案していた。

 「FBサポート業務」の報告書は、投稿に興味を持たせる工夫として「広報担当者のパーソナリティー(人格)を見せる」「時事ねたや流行に即した内容も絡めることで、ユーザーのハードルを下げる」と言及。閲覧者が寄せたコメントを集約し、「いいね!」を押した人の年代や性別、居住する市区町村を集計するなど、世論形成の参考にしたことをうかがわせる記述も含まれていた。

 住民の反対運動を見越したような調査報告書もあった。「嫌悪施設」の建設計画に着目し、反対運動の根強い上関原発(山口県)の建設計画など3事例について、民間シンクタンクに調査を依頼。地元議会や首長の動向、地権者との交渉、反対派と訴訟に発展したケースなどを解析していた。

 NUMOがこうした「理解活動」に投じたとされる費用は、発足した00年から19年度までに計241億円。その原資は電力会社が納付する拠出金。元をたどれば電気料金の一部として利用者が負担している。

 寿都町の応募を受け、9日に会見した近藤駿介理事長は「情報提供や対話活動を地道に進め(応募の)環境を整備できた。1センチ前に出るきっかけになった」と意義を強調した。ただ、寿都町と神恵内村も選定手続きの入り口に立ったとはいえ、最終的に建設地になるかは見通せない。

 東京電機大の寿楽浩太教授(科学技術社会学)は「NUMOは地層処分の実現という使命を果たそうと懸命なのだろう」とした上で「核燃料サイクルの現状やエネルギー政策の在り方も踏まえ、なぜ地層処分が必要なのかを大局的に考えることも必要だ。NUMOの業務の枠組みにとどまらず、社会全体でより視野を広げた議論をすることが大切だ」と指摘する。

 (山下真)

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