理解深めて適切な支援を 鈴木智惠子氏

西日本新聞 オピニオン面

医療的ケア児

 「医療的ケア児等」と「医療的ケア児」の違いをご存じだろうか。

 人工呼吸器を装着している障害児その他の日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児を「医療的ケア児」と呼んでいる。2018年度より重症心身障害児や超・準重症児を包括し、「医療的ケア児等」と表記するようになった。17年度には1万8000人を超え、今後も増加が見込まれている。

 実際の医療的ケア児等の状態は(1)歩けないし話せない子どもたち(2)歩けないし話せない上に日常的に医療機器や医療ケアがないと生きていけない子どもたち(3)歩けて話せるが日常的に医療機器と医療ケアが必要な子どもたち(高度医療依存児)-など個別性が多岐にわたっている。

 一方で行政の事業等の名称を見ると「医療的ケア児」と「医療的ケア児等」が混在し、担当者は対象児の認識不足や勘違いが多い。一般的にも「医療的ケア児等」は人工呼吸器や胃瘻(いろう)などが必要な子どものことと理解され、重症心身障害児や超・準重症児まで認識している人は少ない。

 医療的ケア児等をもつ家族への支援には多職種連携が必要不可欠である。しかし医療、福祉、教育にまたがる制度や法律が絡み合う非常に複雑な構造があり、行政も縦割りだ。保護者は病気や障がいをもつ子どもを連れて複数の担当部署に足を運び、調整することになり、負担となっている。また支援計画書作成の頼みの綱である相談支援専門員は、46%程度が経験5年未満という定着率であり、十分な支援ができないとの声を聞く。これは子どもの病気や障がいが多様なこと、担当する子どもの多さなどによる疲弊による離職も一因と考えられる。

 高齢者の地域包括ケアシステムはケアマネジャーが医療保険と介護保険、障害者総合支援法を統括している。子どものための、すっきりと分かりやすい地域包括ケアシステムの構築も必要ではないか。

 誰にも頼らず、障がいのある子どもを介護してきたある家族は、毎日の入浴を通して体力の限界を感じ、訪問看護に頼るに至ったと聞いた。障がい児はいずれ障がい者になり、親も年を取るという当たり前のことを改めて考え、戒めとなった。子どもへの支援を厚くすることは家族への支援、ひいては共生社会につながるのではなかろうか。

 鈴木智惠子(すずき・ちえこ)佐賀大医学部教授 久留米大大学院博士課程修了。医学博士。佐賀大医学部看護学科小児看護学領域教授を務め、健康な子ども、病気をもつ子どもと家族の支援を続け、学部・大学院教育につないでいる。

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