携帯電話料金 競争による値下げが筋だ

西日本新聞 オピニオン面

 利用者の立場からすれば、携帯電話の料金が下がることに異存はあるまい。多くの人が歓迎するに違いない。

 携帯電話料金の引き下げは菅義偉政権の看板政策の一つである。菅首相のかねての持論で、国民にもアピールできる。

 とはいえ、ルールの枠内で活動している事業者に、政府が「もうけ過ぎだ」と過度に圧力を加え、値下げを迫るような手法は許されない。

 政府の役割は料金体系やサービスの透明性を高めたり、新規参入しやすくしたりして、より競争が働くように事業環境を整えることのはずだ。料金引き下げは、事業者間の健全な競争を通じて実現することが筋だと念を押しておきたい。

 菅首相は携帯電話料金に強いこだわりがある。就任記者会見で「国民の財産である電波の提供を受け、携帯電話の大手3社が9割の寡占状態を長年維持して、世界でも高い料金で20%もの営業利益(率)を上げ続けている」と指摘し「当たり前でないこと」の例に挙げた。携帯電話会社を既得権益の象徴と位置付けるような言いぶりだ。

 官房長官だった2018年8月には、携帯電話会社の利益率が高過ぎるとして「4割程度下げる余地がある」と発言し、料金見直しに向けた政府内の議論をリードしたこともある。

 その結果、改正電気通信事業法が昨年5月に成立した。端末と通信のセット販売を禁止し、顧客を囲い込む「2年縛り」の違約金を大幅に引き下げた。

 さらに携帯電話事業にIT大手の楽天が本格参入した。大手3社による寡占市場に風穴をあけると期待されたが、楽天は自前の基地局整備に手間取り、大手を脅かす存在には至っていない。結果として、料金が高止まりしているのは確かだ。

 この実態は総務省が公表した電気通信サービスの内外価格差調査でも明らかになった。データ通信量が多い大容量プランの価格を世界の主要6都市で比べると、東京はニューヨークと並んで高く、ロンドンやパリの2~3倍の水準だった。

 総務省は電話番号を変えずに携帯電話会社を乗り換える際の手数料を引き下げ、競争を促す方針だ。武田良太総務相は「1割とかいう程度では改革にならない」と意欲を見せ、面談した大手3社の幹部は値下げ要請に応じる姿勢を示したという。

 日本は第5世代(5G)移動通信システムで出遅れた。5G関連などで大手3社の投資は年数千億円規模になっている。大幅な値下げで5Gへの対応が遅れるのは好ましくない。政権の人気取りではなく、バランスの取れた議論を進めるべきだ。

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