中国にはない日本の定番中華「天津飯」、現地で探してみると…  

西日本新聞 坂本 信博

「ドラゴンボールの登場人物ですよね」

 かに玉をご飯にのせ、あんをかけた中華料理の定番・天津飯。実は日本で生まれたメニューだが、西日本新聞の「あなたの特派員」取材班に「天津には天津飯があると聞いた。本当でしょうか」との質問が寄せられた。北京の南東約100キロにある天津へ向かった。

 天津は人口約1560万人の港町。天津駅前で道行く人に「天津飯を知ってますか」と聞くと「天津菜(天津料理)の間違いじゃない?」。天津飯の画像を見せると「蓋飯(ガイファン)?」と首をかしげられた。蓋飯とは、ご飯に肉や野菜などをのせた丼料理だ。女子大学生からは「ドラゴンボールの登場人物ですよね」との答えが返ってきた。日本の人気アニメで天津飯を知った中国人も少なくないそうだ。やはり料理はないのか…。諦めかけていると「おいしい天津飯を出す店がありますよ」と教えてくれた。

 教えてもらったのは天津市内の「地飯食DIFFERENCE」というお店だ。若者に人気の料理店らしく、入店まで1時間待ちの行列。メニューの一番上に「天津飯 28元(約430円)」とあり「天津人自己做的飯≠日本人做的天津飯」(天津人が作る天津飯は、日本人が作る天津飯とは違う)と書かれていた。

 「お待たせしました。天津飯です」。出てきたのは野菜入りのドライカレー風チャーハンに厚切りステーキ、エビ、ゆで卵がのった蓋飯だった。日本の天津飯とは違うが、これはこれでうまい。経営者の李奇峰さん(36)が3年前に訪日した際、天津飯を知り「天津人ならではの天津飯を作ろうと決意して、今年やっと店に出せました」という。

東京と大阪で同時代に生まれる

 天津飯のルーツは、佐賀県伊万里市出身で中国の食文化に詳しい辻学園調理・製菓専門学校(大阪)の横田文良特任教授が「東京と大阪で同時代に生まれたようです」と教えてくれた。

 戦後間もないころ、大阪にあった中華料理店「大正軒」の中国人店主が、郷里の山東省に近い天津に根付いていた蓋飯をヒントに、天津でも大阪でもよく取れていたワタリガニを使って天津飯を考案。偶然ほぼ同じ時期に、東京の中華料理店「来々軒」の日本人店主も「早く食べられるものを」と、かに玉をのせた丼料理に酢豚風のあんをかけた天津丼を生み出したという。

 天津は、20世紀半ばまで上海に次ぐ大都市だった。新たな海鮮料理に、中国の代表的な港町だった天津の名を冠したとみられる。

 ちなみに、天津甘栗も日本生まれの名前だ。同じ製法の焼き栗「糖炒栗子(タンチャオリーズ)」は天津のあちこちで売られていた。クリの産地は天津の隣の河北省。天津港から日本に出荷されたため、天津の名が付いたようだ。

 日中で生まれた新旧の天津飯。どちらも「両国の食文化の往来が生んだ料理」(横田教授)と言えそうだ。(天津で坂本信博)

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