WFPに平和賞 飢餓の救済へ国際連携を

西日本新聞 オピニオン面

 飢餓とは遠い国の出来事だと私たちは思いがちではないだろうか。世界では全人口を賄えるだけの食料が生産されていながら、日々の食事もままならない人が数億人規模に上る。この現実を直視しなければならない。

 今年のノーベル平和賞に国連機関の世界食糧計画(WFP)が決まった。WFPは紛争地域や自然災害で苦しむ人々に食べ物を届ける地道な活動を続けてきた。日本近辺では核開発問題などで経済制裁を受ける北朝鮮への支援でも知られる。

 平和賞の選考委員会は飢餓や食料不安が武力紛争を引き起こし、紛争が新たな飢餓を生むという悪循環を断ち切る必要性を訴えた。その解決に向け、食の安全保障が平和と安定に直結するとのメッセージを国際社会に発したと言えるだろう。

 世界経済の成長に伴い飢餓人口は減少していたが、近年再び増加傾向に転じている。その要因に、まず中東やアフリカで顕著な紛争や内戦の長期化が挙げられる。異常気象による干ばつや大雨も農作物の被害をもたらす。特に今年はアフリカなどで穀物を食い荒らすバッタの大量発生が重なり、深刻な事態が生じている。

 加えて新型コロナウイルスパンデミック(世界的大流行)が追い打ちを掛けている。国境の閉鎖や移動の制限で、食料や医薬品の輸送も滞るためだ。

 WFPの推計によると、世界では今年、飢餓に陥る人がコロナ禍などの影響で増えており、年末には2億7千万人と昨年から倍増する恐れがあるという。

 こうした問題には国際社会の結束こそ不可欠だ。にもかかわらず各国とも感染症対応に追われ、米国をはじめ自国優先が強まり、解決への道は見えない。農林水産省によるとコロナ禍以降、農産物や食品の輸出規制を実施したのは20カ国に上る。

 国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」には2030年までに飢餓や栄養不良を撲滅することが含まれている。平和賞の選考委は「地球規模の課題には多国間協力が必要」と強調した。この言葉を各国の指導者は真剣に受け止めるべきだ。

 日本など先進国では食品が余り、食べられることなく廃棄されるフードロスが目立つ一方、子どもたちの食を脅かす貧困問題も深刻だ。

 日本の子どもの貧困は先進国でも高い水準にある。困窮する子どもらに食事と居場所を提供する「子ども食堂」が近年広がりを見せる。食は命をつなぐのに不可欠なだけでなく、生きる希望も与えるものだ。

 国際支援の充実とともに、私たちも身の回りで自分にできることを考えたい。

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