日本泳法って何?13流派の一つに記者が挑戦 両足で水挟み…

 大分県臼杵市で約200年前から続く日本泳法「臼杵山内流」が、東京五輪の聖火ランナーに選ばれた。でも「日本泳法って何」「どんな泳ぎ方なの」-。次々に疑問が湧いてくる。それならと、早速、水に飛び込んでみた。

 秋深まる今月3日。同市のプールでは見慣れぬ形で気持ちよさそうに泳ぐ数人の小中学生がいた。その脇で優しい視線を送っていたのが「臼杵山内流游泳クラブ」の渡辺乾副会長(65)。この道55年のベテランは週1回、児童たちに伝統の泳法を自主的に教えている。

 同クラブの土谷桂山会長(80)によると、「山内流」の基本泳法は13種類。競泳と比べて疲れにくく、長く泳げる泳法が多いのが特徴という。体を横にして泳ぐ「横泳」や、波に乗りながら進む「大抜手」など。「立泳」には応用編として、水中から弓を放つ弓術、空砲を撃つ砲術のほか、書道をしたためる「水書」、着物を脱いだり着たりする「衣服脱着」などもある。

 「年を取っても若い人に負けない泳ぎができますよ」と渡辺さん。毎年夏に海で修練するため、水難時に慌てずに適切な判断ができるようにもなるという。

 未知の世界に小躍りしたくなる気持ちを抑えながら、いざ出陣。児童たちの傍らで、少し冷たいプールに入り、近代泳法が広まる前まで日本で主流だったという基本技「扇(あお)り足」を教わった。

 まず、体が水面と垂直になるよう横向きに浮かぶ。上側の足を前に出し、下側の足を後ろに開いて、上側の足裏と下側の足の甲で水を挟み込むように閉じると、前に進んだ。小学生の時にスイミングスクールに通い、平泳ぎに慣れてはいたものの、両足首をそれぞれ違う角度に曲げて動かすのがなかなかできない。

 それでも1時間ほど泳いでいると、様になってきた。「脚を動かす勢いを使って効率よく。陸上を歩くようなエネルギーで泳ぐ」。渡辺さんのいう理想も分かるようになった。うまく水を捉えると、体が「しゅーっ」と進む。肌を伝う風が気持ちいい。まるで「イカ」になったような気分だ。

 来年4月24日の聖火リレーでは、6人が臼杵川に入る。2人が川幅約60メートルを渡り切り、他のメンバーも「山内流」と書いた3メートル以上もある旗や花傘を持って、雰囲気を盛り上げる。陸上からは2人がほら貝を吹き太鼓を鳴らして鼓舞する。

 練習していると、「きついっ」という声がプールに響いた。声の主はメイン走者の西水克己さん(65)。この日約半年ぶりに練習を再開したが、トーチと同じ約1・2キロの棒を持った練習に息も絶え絶え。しかしさすが達人。無駄な動きが一切ない泳ぎで、水面にはさざ波しか立たない。

 「せっかくの機会」と、棒を持っての泳ぎにトライした。意気揚々と始めたものの、足をひとかきしただけで、重みに耐えきれずあえなく撃沈した。

 こんなに一生懸命に体を動かしたのはいつ以来だろう。海に面した臼杵市で、熱心に修練した江戸時代の武士の心境に思いを巡らせ、気持ちが引き締まった。プールから上がると、不思議と体が軽く感じたが、翌朝、全身を襲う筋肉痛に悲鳴を上げた。「コロナ太り」の体も少しは引き締まっただろうか-。 (井中恵仁)

 ▼臼杵山内流 日本水泳連盟が認める、伝統ある日本泳法13流派の一つ。1822年、四国・松山の山内久馬勝重が臼杵藩士稲川清記に伝授したのが始まり。海に面した大分県臼杵市で有事に備えた武士の教養として伝承され、1966年、県無形文化財に指定された。

 同市教育委員会が毎年夏休みに、小中学生が泳法を学ぶ「游泳所」を同市の中津浦鯉来ケ浜で開催しているほか、1月には「臼杵山内流游泳クラブ」の師範クラスが初泳ぎを披露する寒中水泳大会が開かれている。

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