台風後の住宅修理、トラブル多発 「火災保険で自己負担なし」は注意

西日本新聞 くらし面 長谷川 彰

 毎年のように台風や豪雨による被害が出る中、住宅の修理を巡り、業者から「火災保険を使って自己負担なしで工事できる」などと勧誘を受けた住民が、トラブルを訴えるケースが相次いでいる。国民生活センターは「近年、相談が急増しており、秋の台風シーズンは特に注意を」と呼び掛けている。

 センターの集計によると、「保険金が使える」と勧誘する住宅修理サービスを巡る全国の相談件数は、2019年度がこれまでで最多の2684件。本年度も8月末時点で1445件に達し、昨年同期(827件)を上回っている。西日本豪雨が発生した18年度以降、増加が著しい。

 九州7県では福岡県が突出し、16年度以降の累計240件は九州全体の7割を占める。福岡市消費生活センターによると、市内の今年8月の相談件数は1件だったが、9月は11件と一気に増加。「台風9、10号が九州に接近したことで、業者の動きが活発になったのかもしれない」と言う。

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 国民生活センターや福岡県消費生活センターによると、以下のような内容の相談が目立つという。

 事例(1) 台風で自宅の雨どいや雨戸が破損していたところ、来訪した業者に「火災保険を使って自己負担なしで修理ができる。お宅の状態なら保険金が出る」と言われ、保険金の請求手続きも任せた。保険会社の査定は130万円だったが、業者が示した工事の見積もりの内訳は、足場分だけで50万円。だが実際には足場を覆うネットも張られず、雨戸は廃材を使った粗末なものだった。納得できない。

 事例(2) 業者から住宅の無料点検案内があり、依頼すると、「屋根や雨どいなどが台風で傷んでいる。火災保険で修理できる」との回答があった。保険金が確実に出るのが分かったら契約すると言ったのに「キャンペーンの有効期限がある」と3時間居座られ、約300万円で契約した。保険会社の判断は「老朽化による修理に当たるので保険金は出せない」。せめて業者に減額を求めることはできないか。

 事例(3) 70代の父親の自宅を突然訪れた業者が「雨どいが古くなっている。台風で壊れたことにすれば火災保険で修理できる」と言っている。問題があるのではないか。

 事例(4) 台風の影響で雨漏りがするようになっていたところ、業者から電話で「火災保険で対応できる」と勧誘された。工事の見積額は約400万円。保険金の請求は業者が代行すると言うので契約したが、保険会社から「全額は出ない」と査定された。解約しようと思って契約書を見たら「違約金は保険金の5割」と書かれている。業者からは「自分たちの存在は保険会社には伝えないで」と言われており、悪徳商法に引っ掛かった思いだ。

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 国民生活センターと日本損害保険協会は、こうしたトラブルに至る契約を分析すると、(1)自己負担ゼロの強調(2)強引な勧誘(3)うその理由での保険請求-などの傾向が浮かぶ、と指摘。その上で、老朽化した部分の工事を台風や大雨の被害だと偽って保険金を請求すると「消費者の側も詐欺罪に問われる恐れがある」と注意を促す。

 災害の頻発で不安を募らせる消費者の心理につけ込むような一部の心ない業者の行動は、健全な業者にとって迷惑千万。市民の防災準備や被害復旧の妨げにもなりかねない。

 業者の説明に迷ったり疑問に思ったりしたときは、すぐに契約しないことが肝要。訪問販売や電話勧誘の場合、契約後であっても、契約書を受け取ってから8日間はクーリング・オフ(無条件解約)が可能だ。

 電話相談窓口の消費者ホットライン=188(全国共通で受け付け、相談者の身近な窓口を案内)を活用してほしい。損保協会そんぽADRセンター=(0570)022808でも電話相談を受け付ける。

 (特別編集委員・長谷川彰)

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