首里城、熊本城…文化財保護にコロナの逆風 復興と防災に支援を

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え(25)

 紅色の美しい首里城が焼失して、今月末で1年がたとうとしています。

 日本では1949年に法隆寺金堂が、50年には金閣寺が焼失した歴史から、防火対策は海外より進んでいると思われていました。文化財は観光客誘致も兼ねるため、保護・防災と経営のバランスは難問です。さらにコロナ禍で、入場料収入の減少が追い打ちをかけています。

 九州でも2016年熊本地震により熊本城が、17年九州北部豪雨で朝倉三連水車が被災しました。文化財は地域の心のよりどころ。人々は喪失感に襲われます。生活支援と並行した文化財再建は、被災地の心を和らげ、その進み具合を目にすることで前向きの気持ちを生み出し、復興を加速させる効果もあります。

 1995年阪神淡路大震災を機に、震災対策における文化財保護の課題が顕在化しました。建物の損壊だけでなく、博物館で展示されていた陶器などの宝物やガラスケースが壊れました。守りながら、どう展示するかが求められました。

 私はこの年、博物館学芸員資格取得のため実習を受けた大阪市立東洋陶磁美術館で、展示品が揺れで倒れないよう透明な糸で押さえる手法を学びました。既に普及定着した対策の一つだと思っていましたが、2014年に九州大に赴任した際、九州内には未対策の博物館もありました。

 日本では、政府としては主に文化庁が文化財の防災と復興の技術訓練も含め支援を後押ししています。総合大学としては、03年に立命館大に歴史都市防災研究所が設立され、いち早く取り組んでいます。

 そういった日本の技術は海外の災害時にも役立っています。浸水した文書遺産を冷凍保存して復旧させる技術は、04年スマトラ沖地震津波の際、インドネシア・アチェ州の貴重な中世のコーランなどの復旧に貢献しました。私も現地の日本大使館に赴任中で、この支援に感銘を受けました。

 人口減少で国家予算が削られる中でも、続けてほしい海外支援の一つです。人類共通の宝を守り、文化の復興を支えることは国際貢献になると考えます。

 世界遺産候補の審査で有名なユネスコの諮問機関、国際記念物遺跡会議(ICOMOS)の委員長は、九大の河野俊行副学長が務めておられ、自然災害や紛争で失われた文化財の復興も後押しされています。

 文化財保存修復研究国際センター(ICCROM)が指導や研修を行います。昨年は佐賀大で夏季セミナーがあり、私も見学しました。被災文化財の保護技術と知識は、九州の人材が世界をリードしていることもぜひ知ってください。

 さらに文化財の防災とともに、災害の記憶を伝える石碑など、生活に根差した習慣や遺物が文化にまで昇華するようになれば、お金を掛けないソフト防災が一層進むと考えています。

 (九大准教授・杉本めぐみ)

 ◆備えのポイント 各地の文化財建造物や文化施設もコロナ禍による入場料収入減で防災が進まない状況です。お気に入りの所にぜひ支援を。一例として首里城火災に対する支援先(10月末まで)を紹介します。→こちら

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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