米大統領選、無事に終わるのか「何でもあり得る」激戦州で聞いた言葉

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 「ワシントンにいるだけでは大統領選や国内の情勢はつかめない」。米国で取材を始めて3年半の間、取材先から何度となく受けた指摘だ。

 11月3日の大統領選投票日が近づくにつれ、ワシントン近郊の自宅近くでも候補者の看板が増え、おのずと選挙が話題に上る。だが、首都圏は共和党のトランプ大統領を嫌う民主党支持層が圧倒的に多く、新型コロナウイルスに感染したトランプ氏には同情論より「自業自得」といった冷たい目が向けられがちだ。最近は「民主党のバイデン前副大統領が地滑り的に勝つのでは」と予測する声すら上がる。

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 その点、7~9月にかけて計3度訪れた中西部や東部の激戦州の雰囲気は、ワシントンとはかなり異なる。特に農村部など地方に行くほどトランプ氏の人気はなお根強い。

 ウィスコンシン州の農家レンキさん(86)は、貿易摩擦で米国農産品の輸入を一時停止した中国に憤り「今後、さらに悪影響が及ぶのでは」と案じていた。対中強硬姿勢のトランプ氏の続投を願う、彼のような支持者はざらだ。

 ただ、全面的に支持する人ばかりとは限らない。レンキさんの友人のダニエルソンさん(74)は、政敵をあだ名で呼んで罵倒するようなトランプ氏の言動は「子供のけんかレベルで、国家の恥」と切り捨てた。今回、投票はするものの「渋々だ」という。

 農家にも「反トランプ」はいる。州北東部のアダムスキさん(65)は、農地価格の高騰や巨大資本による寡占化などに伴い経営環境が厳しさを増す農業問題に「トランプは立ち向かわなかった」と手厳しい。とはいえ、手を打てなかったのは民主党も同じで「反省を感じない」とも。バイデン氏に投票するが、気乗りしない様子がにじんだ。

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 「どちらも政党のための政治ばかり。対立するにもほどがある」。政治への強い不信感が漂う農村部でひときわ不満を募らせていたのはトランプ氏支持のノフリチェクさん(63)。一方で、都市部で頻発する暴動など混乱続きで予測不能な現状を憂え、選挙後の沈静化を心から願っていた。

 しかし、トランプ氏の感染に始まった今月も、半月前に訪れたばかりのミシガン州ではトランプ氏と敵対する民主党女性知事の拉致を企てる事件が発覚するなど、不穏なムードは色濃くなるばかりだ。

 「2020年は何でもあり得る」。農家も含め激戦州で多くの人が真顔でこう口にした。「子供を守るため初めて銃を買った」という母親(34)もいた。そしてワシントンのホワイトハウス近くの公園は、今もフェンスで覆われている。「選挙は無事に終わるのだろうか…」。毎日そんなことばかり考えている。

 (ワシントン田中伸幸)

 =随時掲載

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