「授業にスマホ」教育の充実を急ぐ現場の試みが先行

西日本新聞 社会面 四宮 淳平

 公立高校で私用スマートフォンの授業での使用を「解禁」する動きが目立ち始めた。「教育活動に直接必要がない」として制限する文部科学省に対し、デジタル機器による教育の充実を急ぐ現場の試みが先行している。コロナ禍でのオンライン授業の浸透にも後押しされ、主体的な学習を深める実践として注目される。

 福岡県須恵町の県立須恵高(生徒数870人)は本年度、授業で本格的にスマホを使い始めた。例えば、9月下旬の生物の授業。プリント問題を解き終わった生徒から自分のスマホで教諭が作った解説動画を視聴していく。分からない部分を繰り返し見たり、ネット検索したり、質問や考えを書き込んだりしながら、理解度に応じたペースで学ぶ。

 スマホを持っていない生徒には学校が貸し出す。担当する坂本仁教諭(33)は「挙手しての発言が少ない生徒も参加し、学級全体で対話できる」と手応えを感じている。生徒にも「スマホで授業と関係ないものを見ようとは思わない。書き込む意見や質問が評価されるため授業に集中している」と好評だ。

 福岡県教育委員会によると、県立高はそれぞれでスマホの使用ルールを策定し、須恵高以外でも活用が広がっている。熊本、大分、鹿児島3県でも学習記録や調べ学習に使う高校があり、宮崎県は持ち込みの是非を検討し始めた。生徒1人に1台のパソコンを配備済みの佐賀県は校内でのスマホ使用を一律禁止。長崎県は原則持ち込みを禁止している。

 学校現場では、社会の現状を調べる探究的な学習や、学習内容の記録が重視されるようになり、授業にデジタル機器を使う場面が増えた。文科省は小中学生にはパソコンやタブレット端末などの1人1台配備を急ぐが、高校生については2022年度までに3人に1台配備の方針にとどまる。デジタル機器導入を進める私立高に対し、多くの公立高は整備が追いつかず、私用スマホの解禁につながっている。

 ただ、文科省は09年、都道府県教委に対し、携帯電話は「学校の教育活動に直接必要がない」として制限するべきだと通知。今年7月にも同様の通知をするなど、制限する姿勢を崩していない。同省の19年8月の抽出調査によると、公立高の8割超が校内や授業中の使用を禁止し、約1割は持参が禁止もしくは原則禁止だった。目的外使用でのトラブルやスマホ依存の助長といった懸念は残り、解禁には対策も求められる。

 須恵高の荒木礼子校長(56)は「スマホでの動画の視聴は、生徒の能動的な学びにつながると同時に、何度でも利用できるため教員の働き方改革にも役立つ。対面授業とオンライン学習の良さを組み合わせて新しい教育の形を目指したい」とする。既に複数の教員がそれぞれの手法で実践しているといい、今後もさらに浸透していきそうだ。 (編集委員・四宮淳平)

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