来年度予算編成 既得権益に大なた振るえ

西日本新聞 オピニオン面

 2021年度政府予算案の編成が年末に向けて本格化する。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で異例ずくめの作業となる。菅義偉首相は就任以来、役所の縦割りやあしき前例踏襲を打破すると繰り返している。予算編成でこそ、政権の独自色を発揮してもらいたい。

 21年度予算の各省庁の概算要求は例年より1カ月遅い9月末が締め切りだった。財務省によると、一般会計の要求総額は105兆円を超え、3年連続で過去最大を更新した。

 これ以外にも、概算要求段階は項目だけで金額は示さない「事項要求」がある。これが多いのも今回の特徴だ。先を見通すのが難しい新型コロナ対策や、3カ年の緊急対策が終わる防災・減災と国土強靱(きょうじん)化に関する事業などで、潜在的な額は数兆円規模とみられる。

 例年なら4カ月近くかけて財務省が内容を査定して金額を絞り込むが、今年は査定に使える時間が少ない。このままでは、当初予算額が102兆円台で過去最大だった20年度を上回る可能性もある。

 もちろん新型コロナの感染拡大防止や、コロナ禍から雇用や暮らしを守るための対策、災害被災地の復旧復興支援など真に必要な事業に予算を惜しむ必要はない。

 ただ、7年8カ月に及んだ第2次安倍晋三政権下で予算規模は年々膨張し、日本の財政状況は一段と悪化した。財政規律を軽視した歳出拡大をいつまでも続けるわけにはいかない。

 今回の予算編成は、既得権益を守ろうとする各省庁の前例踏襲や縦割りに大なたを振るう絶好の機会である。財務省は各省庁と精力的に折衝し、不要不急の予算に大胆に切り込み、本来の役目を果たすべきだ。

 そもそも概算要求額が膨らんだのは、前政権下だった7月に財務省が示した概算要求の方針に「穴」があったためだ。各省庁の要求額は基本的に20年度予算と同額とする一方、新型コロナ感染症への対応など「緊要な経費」については別枠とし金額に上限を設けなかった。

 概算要求には、これを都合よく解釈する事例が目につく。国土交通省整備新幹線の予算を「緊要」に加えたのが典型だ。農林水産関係の要求も20年度当初予算比で20%増だった。

 7月の方針では、施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ予算を大胆に重点化するよう求めていた。各省庁の要求は、こうした取り組みが不十分と言わざるを得ない。

 首相が力を入れるデジタル化も旧来型事業が目立つ。「国民のために働く内閣」は無駄な予算のカットから始めてほしい。

PR

社説 アクセスランキング

PR

注目のテーマ