「まだ昭和の人が多い」コロナ禍の令和に求められる”亭主関白”とは 平成生まれの記者が聞く「全亭協」の狙い

西日本新聞 黒田 加那

 「『全国亭主関白協会』という団体の活動を調べてほしい」。そんな声が西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。略して「全亭協」と称し、拠点は福岡県にあるとか。亭主関白と聞くとまず反発心が頭をもたげる平成生まれの女性記者が全亭協の門をたたいた。

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 関白とは、かつて天皇の補佐として国政に関わった最上位の地位。転じて、夫が家庭内で権力を持つことを「亭主関白」と呼ぶ-。

 「その意味は間違いです」と、同協会の天野周一会長(68)は断言する。その主張はこうだ。

 亭主はもともと茶席で客を接待する人を意味する。また関白は天皇に次ぐ身分のこと。つまり「家庭の『天皇』である妻をもてなし、補佐するのが真の亭主関白」というわけだ。

 全亭協は1999年設立。「亭主が変われば妻が変わる。家庭が変われば、日本が変わる」をコンセプトに全国に約2万5千人の会員がおり、日々研さんを積んでいるとか。

 福岡県久留米市にある事務局の壁には「新亭主関白道段位」と書かれた張り紙が。初段は〈3年以上たって妻を愛している人〉、二段は〈家事手伝いが上手な人〉と徐々にランクアップ。各支部の報告に従い、天野会長が段位を認定している。最高位の十段〈『愛している』を照れずに言える人〉は2人。道は険しい。

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 五段〈愛妻と手をつないで散歩できる〉の天野会長だが、かつての自身を「妻の話も聞かなかった。ひたすら稼いで家族を養い、年に1、2回旅行に連れて行けば満足だろうと思い込んでいた」と振り返る。

 40代のころ、妻から離婚を申し出て別れる夫婦が周囲で相次いだ。パートナーを失う男性たちの姿に「惨めだよなあ」と漏らした天野会長に妻は言った。「次はあなたの番ね」

 慌ててわが身を振り返った天野会長。家事や育児に参加し、妻とコミュニケーションを取り、感謝を言葉に表した。「旅行やプレゼントより、日常こそが重要だと気づいた」

 関係は持ち直し、現在結婚38年目。ある日、妻がつぶやいた。「結婚して本当に幸せ」

 本職は出版業。以前は夫婦関係に関するコラムをタウン誌に執筆するなど積極的に全亭協をPRしていたが、近年は交流会など会員向けの活動に絞っていた。

 それが今年、新型コロナウイルス禍を背景に状況が変わった。「在宅勤務が続くせいか、妻と衝突する」「もう何日も妻が食事を作らず、一緒に食べてもくれない」といった相談が急増したのだ。

 テレビを見れば、ストレスから他人への中傷に走る人々のニュース。「他者への思いやりが足りていない。今こそ新亭主関白道だ」と再び活動を活発化した。

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 一方、発足20年を超えた全亭協を取り巻く環境も変化を続けている。共働きはさらに増え、ともにフルタイムで働く夫婦も多い。二段の「家事『手伝い』が上手な人」などは、家事が女性の役割である前提に立っていて、時代にそぐわないような。

 平成初期にできた新亭主関白道。そろそろ「令和版」の段位が必要かもしれない。どうですか? 天野さんは首を横に振った。「まだまだ『昭和』で立ち止まっている人がたくさんいる。まずは平成の新亭主関白道を」

 確かに、記者のような平成世代の中でも「家事育児は女性中心」という考え方は根強い。まずは昭和から平成へ。奥義への道のりは長い。(黒田加那)

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