青山真治監督7年ぶり新作『空に住む』 現代女性の浮遊する心描く

西日本新聞 吉田 昭一郎

 東京都心のタワーマンションに住み始めた出版社勤務の女性がスター俳優との出会いをきっかけに生き方を見つめ直す劇映画「空に住む」が10月23日、全国公開される。北九州市門司区出身の青山真治監督が放つ7年ぶりの新作だ。

 主人公の小早川直実(多部未華子)は28歳。出版社の編集者として働く。両親が急死し、叔父夫婦が住むタワーマンションに引っ越してきた。両親の葬儀で泣けなかったのが心に引っかかっている。一人っ子だが、父親は仕事優先で母親は夫ばかりを見ていた。少女時代に拾って飼い続けるネコが心の支えだ。

 意思表示が不得手な面がある。「雲みたいだ」と評される。人との間に一定の距離を置くのだ。そんな直実が、エレベーターで乗りあわせたスター俳優、時戸(岩田剛典)から声を掛けられ、思いがけずに深い関係になる。

 多数の女性と関係を持つとされ、男女関係は利用し合いだとドライな時戸だが、その話には的を射るところがある。直実に対して「中身まっすぐなのに、表現がねじれててややこしい」「本当のこと分かってんのにうそついちゃってる、みたいな」。そんな人物評を言う。直実は何か感じるところがあったようだ。新たな本の出版企画を思いつき、動きだす。

 原作は、ダンス&ボーカルグループ「EXILE」や「三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE」などの楽曲に携わる作詞家、小竹正人氏の同名小説。青山監督は、原作の主人公はアルバイトで働く女性だったが、映画では出版社勤務として描き出した。

 長く付き合った作家との間で妊娠し、今、それを隠して別の男性と結婚しようとしている出版社の後輩(岸井ゆきの)も、独自に登場させた。同じマンションに住む直実の叔母(美村里江)は専業主婦で、バブルの頃は相当遊んだが、今は夫の出張時に一人になるとやることがない。

 今作について、青山監督は「現代日本社会に生きる女性たちの物語」と言う。旧態依然の「男社会」を受け止める女性たちはしんどいことだらけ。愛の実体をつかみ損ねて、心は浮遊する。「内面にちょっと不安というか不満というか、他の人との隔たりを感じて生きているということで言えば、3人の女性は違った生き方をしているように見えて、実はかなり近しいところにいるんじゃないか、と思う」。共通項はやはり生きづらさなのだろうか。

 恋愛とは、人生とは、女性の自立とは。万象があり得て正解がない問いに答えを出すのは、言うまでもない当人である。不安定な逢瀬の先に、直実はどんな将来をたぐり寄せていくか。

 三代目-とEXILEのメンバーで、「岩(がん)ちゃん」の愛称でアイドル的な人気の岩田が、プレーボーイで自己中心的なスターを演じている。ファンはハラハラ、ドキドキしてしまうかもしれない。 (吉田昭一郎)

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