あの日、何を報じたか1945/10/18【隣組 民主主義発生の基盤へ 県振興課長に質す「読者の声」】西日本新聞の紙面から

西日本新聞 福間 慎一

 〈戦争遂行のために組織された国民の各種組織は終戦とともに存在意義を失った。次々に解消されつつあるが、その一つたる隣組、部落会などの末端組織はどうなるか。隣組、部落会などは単に配給組織としてならともかく、従来の運営方法ではいたずらに国民の生活負担を高めるものにすぎないとして、本紙の読者欄にも投稿が非常に多いので、その「読者の声」を福岡県佐伯振興課長に質してみる〉

 1940年に内務省の訓令「部落会町内会等整備要領」に基づき制度化された「隣組」。住民の相互監視などによる統制強化、挙国一致体制の推進の礎となった。記事によると、隣組の存在を好ましく思っていない市民からの投稿が相次いでいたようだ。

 読者の求めに応える形で、県の担当課に、否定的な立場から隣組の今後を尋ねている。

 〈問 隣組は戦争遂行上の必要から生まれたものだが終戦後の存続は必要か〉

 〈答 必要と思う。なぜならば民主主義の育成も一つの隣組、部落町内から始めることが賢明の策と思う。(中略)今後、民の意思、民の顔色によってことを進めてゆくなら、運営一つで存続の意義は大いにある〉

 記者はさらに、それならば改善の余地があると指摘。県課長は〈下情上通(※下の人の思いが上の人に達すること)の方策を樹立して民主主義発生の基盤たらしめること〉と強調している。

 〈問 全体主義の浸透機構とも見られているが、その点からも廃止すべきではないか〉

 〈答 大多数の意見を押し切って一つの申し合わせをすることは極めてまれではあるがその傾向はあった。全体主義原理としてはそのまれな場合が許された。今後こうしたことは是正されねばならないが、民の真の意思を表明し得る常会組織ならば今後大いに意義がある〉

 県担当者はあくまで、改善することで相互扶助の基盤としたかったようだ。

 〈問 隣組で個人の生活上の機密にわたる調査、例えば収入、家系などを調査することはこの際廃止すべきではないか〉

 〈答 ろくでもない諸調査が隣組に飛び込んで煩わしていることは情けないことだ。従来とも、そんなことに利用されてはならないので機会あるごとに関係方面に注意を促してきた〉

 〈問 隣組長などの不正事件から一般市民の隣組制度不要論は極めて強く、本社の「読者の声」欄にも毎日何通か届いているが、これらの行動を調査してはどうか〉

 〈答 そうした声はある程度聴いている。大きな問題だから近く徹底的な調査を開始するつもりだ〉

 占領軍も隣組の存在を問題視、1947年に解体されたが、住民の共同体はさまざまな形で存続。52年に日本の主権回復を認めるサンフランシスコ講和条約が発効すると、町内会などは復活。今に至っている。 (福間慎一)

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 〈〉の部分は当時の記事から引用。できるだけ原文のまま掲載。

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