もちろん言ってる方も半分…

西日本新聞 オピニオン面

 もちろん言ってる方も半分冗談だったのだろうが、音楽ファンの間では昔「筒美京平実在しない説」が流れていたという。筒美京平という個人はおらず、複数の作曲家によるグループだ-そんな珍説である

▼たった一人であれだけ多くの名曲を作れるはずがない、という理由を聞けば、納得しそうになる。確かシェークスピアにも同じような説があった。並外れた業績を残した表現者ならではの現象だろう

▼その筒美京平さんが80歳で亡くなった。訃報に添えられた作品リストの質と量に改めて驚く。「また逢う日まで」「17才」「木綿のハンカチーフ」-時代を彩った大ヒットばかりなのだ

▼それだけの大御所でありながら、職業作曲家という黒子に徹し、表舞台にほとんど出なかった。これも「非実在説」が流れた一因だったのかも

▼筒美さんが一度珍しくテレビの特集番組に出演し、自作を語っているのを見て、気付いたことがある。ピアノを弾きながら解説するのだが、弾き終わって残響のペダルから足を離すのが早い。余韻を残さずに話に移る。その淡々とした姿に、この人はアーティストというより職人かたぎなのだなあ、と感じたものだ

▼中高年のグループでカラオケに行ったとする。筒美さんの曲だけで1時間は軽く歌えるはずだ。若い人が加われば「サザエさん」もある。希代のヒットメーカーが実在してくれたことに、感謝するばかりである。

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