「マルジナリアでつかまえて」 山本貴光著

西日本新聞 内門 博

 マルジナリアとは、書物の余白への書き込みのことである。古本を入手して誰のものか分からない書き込みに遭遇したことが一度ならずあるだろう。この本はこれに眉をひそめずに、奨励する立場をとる。夏目漱石、和辻哲郎など著名人の書き込みや、著者自身の書き込み作法などを紹介しながらその魅力を説く。

 駆け出し記者の頃に出会ったあるデスクが、若い記者の原稿に実践していた手直しを思い出した。既に新聞社の原稿は手書きからワープロ主流に移行していた。そのデスクは記者の元原稿をプリントアウトし、余白に赤字でぎっしりと修正点を書き込んで返すのだ。

 「こうしないと、どこをどう直したか伝わらない」

 本もまた電子媒体が増え、読書の形態は転換期にある。だからこそ、読書の痕跡を愛(め)でる著者が現れ、その内容に膝を打つ読者も少なくないのだろう。(内門博)

 「マルジナリアでつかまえて」 山本貴光著(本の雑誌社・2200円)

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