「市民とのつながり生命線」 福岡市博物館30周年

西日本新聞 ふくおか版 横田 理美

 福岡市博物館(同市早良区)が18日で開館30周年を迎える。全面ハーフミラー張りの建物は1989年の「アジア太平洋博覧会」のテーマ館として親しまれ、翌年に博物館としてオープンした。アジアとの交流の歴史やいにしえからの人々の営みを発信してきた。有馬学総館長(75)はコロナ禍に直面したことが「冒険心あふれる先人の歴史を振り返り、活力を見いだすきっかけになれば」と願う。

 「欠かさず催せることを誇りに思う」。17日、資料寄贈者への感謝状贈呈式で有馬総館長は礼を述べた。こうした式を毎年開く博物館は全国でも少ないといい、「市民とのつながりこそが生命線」と言い切る。

 開館3年前の87年、古代の迎賓館「鴻臚館」の跡が見つかり、それまでの文献に依拠した歴史が出土品によって裏付けられた。有馬総館長は「博物館の必要性を後押ししたのは間違いない」と振り返る。14人の学芸員が置かれ、体系的に史料を集める体制が整った。

 収蔵品の75%にあたる20万点超は市民からの寄贈。ミシンや駅弁の包装紙、博多絞りの浴衣など、市民生活や地域に根ざす民俗史料が主だ。「地域に散らばる『かけら』を寄せ集めることで、歴史をより大きな枠組みで組み立てられる」と松村利規学芸課長。市民から持ち込まれた際には、重要性が分からないことも多く「収集は学芸員のセンスが問われる」と明かす。

 集まった史料は学芸員の手で一つ一つ精査される。2017年には学識者の遺族から寄せられた寄贈品から、太平洋戦争末期の福岡大空襲の様子を記した日記が見つかった。同様の収蔵品は他になく、地域の重要な史料が散逸を免れた。

 コロナ禍の今年は休館も強いられた。一方で小中学校から出前授業の依頼が相次ぎ、博物館の本質を見つめ直す契機になった。「博物館(の真価)は立派な建物ではなくスタッフ。地域の宝を生かすのは人材だということをしっかり受け止めたい」。有馬総館長が力を込めた。 (横田理美)

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