新ガリバー旅行記(10) 男をひっぱたけ【中村哲医師寄稿】

西日本新聞

 <2000年7~8月に本紙朝刊に掲載された中村哲医師の寄稿連載随筆「新ガリバー旅行記」(全50回)>

 どこの社会も女性は男性よりもっと保守的かつ直截(ちょくせつ)であって、底辺から伝統社会を支えている。アフガニスタンの内乱のいきさつも、パシュトゥヌワレイ(パシュトー人の掟(おきて))も、これら保守的な女性の存在ぬきに考えられない。

 復讐(ふくしゅう)の掟にしてもそうだ。わが子を「復讐要員」として徹底的に育成するのは、母親である。男は妥協的である。「まあまあ」で済ます社交術に長(た)けている。よく言えば社会的に成熟しているが、悪く言えば「ずるく立ち回る」ということになる。

 話がそれるが、かつて日本がそうであった。「あんた、それでも男ね」というセリフが懐かしい。昔は日本にも傑物がたくさん出たが、今は少なくなった。考えるに、昔は女が偉かったからだ。私の祖母も母も、表向き夫を立てておいて、陰では十分なコントロールができた。男の方は痛い所をつかれると怒るが、自分が過ちだと認めればしぶしぶ意見を取り入れた。男は威張らせていただいていたのである。だから夫婦併せて二人分の仕事ができた。こういうと、フェミニストたちから猛烈な反撃がくるので、せめて紙面を借りて小声で呟(つぶや)いておきたい。「女(おな)ごはすっこめ」などと発言すれば、下手をするとセクハラとやらで処罰されることもあるからだ。ただ、断っておくが、私は決して過去を賛美しているのではない。日本がだめになったのは女が権利を獲得したからではなく、男が駄目になってきたからだ。

 その証拠に、いわゆるもてる男のタイプが変化してきた。「かっわいー」という一語でしか評価されない男の身になっていただきたい。これではペットと大差ない。もてたいと思うのは、異性を引き付けようとする健全な願望である。それが、女の願いに合わせて、かわいい男になるのでは立つ瀬がない。男性化粧品屋は喜ぶかもしれないが、社会全体が引き締まるとは思えない。これは国の衰亡に関わる。男よ出てこい。女よ、軟弱な男をひっぱたけ。

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