「自分の価値観で悲観していた」仕事漬けだった男性が、ダウン症の息子に教わったこと

西日本新聞 北九州版 浜口 妙華

 ダウン症の息子との生活を通して生きる喜びをブログで発信している人材育成コンサルティング業の田中伸一さん(50)=福岡市東区=が17日、豊前市で講演した。障害がある息子の飾らない姿に触れ、仕事漬けだった価値観が変わった。「今、幸せでいられるのは、息子や家族のおかげ」と優しく語り掛けた。

 嘉麻市出身の田中さんは、大学卒業後に福岡銀行に入行。23歳で結婚した。第2子の長男・彰悟さん(24)は、生まれてすぐダウン症と診断された。重い知的障害もあり「普通に生活できるのか。恋愛や結婚はできるのか。将来を考えると不安だらけだった」

 生後2カ月、肺炎の影響で気管が閉じ、気管切開の手術を受けて言葉を出せなくなった。世話は妻に任せきりだった。

 仕事人間だった田中さんだが、彰悟さんの通院のため転勤のない地元企業に転職。2008年に今の仕事を始め、息子と過ごす時間が増えた。

 忘れられない出来事がある。10年ほど前の長女の誕生日。レストランで彰悟さんが初めて「乾杯」をした。いつの間にか動作を覚えたらしい。家族4人でグラスを響かせた。「当たり前と思うことが、こんなにもすごいことだとは」とうれし泣きした。

 次第に息子を誇らしく思えるようになった。書道や絵画を心から楽しむ表情、食事では長い時間をかけて手を合わせ感謝を忘れない姿…。ありのままの自分を見せてくれる彰悟さんと触れ合ううちに「自分の価値観で息子の人生を悲観していたが、受け止め方を変えたら幸せを感じた」。

 尊敬する人は息子と言い切る。「自分らしく生きることの大切さを息子から教えてもらったから」 (浜口妙華)

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