エラリー・クイーンから夏樹静子さんへ 親交の書簡発見、英文俳句も

西日本新聞 社会面 藤原 賢吾

 「蒸発」や「Wの悲劇」などの推理小説で知られ「ミステリーの女王」と呼ばれた作家・夏樹静子さん(1938~2016)の福岡市の自宅から、米国を代表するミステリー作家エラリー・クイーンの直筆書簡が2通見つかった。1通には俳句が、もう1通には創作論がしたためられ、研究者は「クイーン唯一の俳句だろう。非常に貴重な書簡」と高く評価する。

 ミステリーに詳しい福岡市の詩人・二沓(にとう)ようこさんが、2018年から夏樹さん宅の資料を調査する中で、1977年10月11日と翌12日に自筆で記された書簡を書斎の文箱から見つけた。

 「Yの悲劇」などで知られるクイーンは、共作したダネイとリーのいとこ同士のペンネーム。リーは71年に死去したため、夏樹さんは77年9月に光文社などの招きで初来日したダネイ夫婦と出会った。このとき、共に京都を旅し、以後も鎌倉や北欧などで親交を育んだ。二沓さんは「夏樹さんは若手だったが、英語が堪能なために応接を頼まれ交流を深めたのだろう」と語る。クイーンへのオマージュをささげた代表作「Wの悲劇」は、タイトルの了解を得て細部のアドバイスも受けて執筆した。

 ダネイは多忙で、夫婦から頻繁に届いた書簡の大半は妻ローズによるものだが、11日の書簡はローズのタイプによる本文に続き<エラリーが創作した英語の俳句を自らしたためます>と追伸があり、<アメリカの空から降りて咲く我(われ)ら>(訳、伊東裕起・城西大助教)という意味の英文俳句とサインが書かれている。この俳句は、後にローズが米国で出版したクイーンの回顧録で紹介されている。

 12日は全文ダネイの自筆。夏樹さんにミステリー創作の秘訣(ひけつ)を伝えた内容で、<意表を突く始まりは読者の興味を引くために重要です。意表を突く終わりもいつでも望ましく、それが意表を突くだけでなく信憑(しんぴょう)性を持つのなら素晴らしい。意表を突く冒頭と結末のいずれもが理想です>とつづっている。

 二沓さんは「夫妻がどれほど夏樹さんを愛していたのかが分かる。俳句を選んだことにミステリー作家らしい遊び心を感じる」と指摘。クイーン研究家の飯城勇三(いいきゆうさん)さんも「クイーン唯一の俳句とみられ非常に貴重。ミステリー創作論も始まりの重要性に言及したものはない」と話す。また、米国の著名なクイーン研究家F・M・ネビンズさんも「見たことのない内容。アメリカのファンにも紹介したい」と評価している。(藤原賢吾)

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