「日本に恩返し」困窮大学生にうどん無料券 中国出身経営者の思い

西日本新聞 ふくおか都市圏版 下村 佳史

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、親の収入減などで生活が困窮している西南学院大(福岡市早良区)の学生を支援しようと、地元のうどん店「やお八うどん」(同区西新4丁目)が、うどんやそばを無料で提供している。「日本語を十分に話せなかったころから、支えてくれた日本人に恩返したい」と経営する中国出身の馬東敏さん(47)。同大を通じて配布された無料券で食事をする学生たちを優しく見守っている。

 同店は市営地下鉄西新駅そばで同大から徒歩5分。「1日に使える食費は200円」「夜の1食だけで栄養が足りず、体がだるい」。切り詰めた生活をしている学生がいることを地元商店街の人から聞き、馬さんは無料提供を思い立った。

 馬さんには、中国吉林省の大学に今年入学した一人娘がいる。「同じ年頃の日本の学生に、温かい食事をとってもらいたいという思いでいっぱいになった」。

 礼儀正しく、安心して暮らせる日本に憧れ、馬さんが来日したのは16年ほど前。市内の日本語学校に通う傍ら、現在経営する店でアルバイトを始めた。来日したばかりで言葉がうまく通じないときも常連客が粘り強く、ていねいに教えてくれたという。「日本語に慣れるよう、うどんを食べながら、わざわざおしゃべりをしてくれる人もいました」と馬さん。

 生活の場を福岡に築こうと、12年ほど前に思い切って前の経営者から店を譲り受けた。中国で受験勉強に打ち込んでいた娘がようやく大学に入学でき、日本に遊びに来るはずだったのに、コロナ禍で中止に。客足も大幅に減って、店の経営は厳しくなった。

 それでも、馬さんの学生支援の気持ちは真っすぐだ。「喜んで食べてもらえたら、それだけでいいんです。困っている学生をただ助けたい」と打ち明ける。

 うどん・そばの無料券は職員や同窓生、民間企業などから寄せられた食料品を大学側が学生188人に無償配布した9月上旬に一緒に配ってもらった。無料券を持って来店する学生の多くは馬さんが贈り主だとは気付いていない。ただ、店内には「おいしかったです」という学生に「頑張ってね」という馬さんの心のこもった言葉が行き交う。

 学生への食料配布を担当する担当課長からは笑顔の絵が盛り込まれた手書きのはがき10枚がプレゼントされた。「あなたは大切な人」。最大の感謝の言葉に馬さんの笑みが輝いた。 (下村佳史)

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