安倍前首相、健在アピールの理由 閣僚経験者「まだ若い」

西日本新聞 総合面 河合 仁志

 持病の悪化から史上最長政権に自ら幕を引いて1カ月-。安倍晋三前首相が19日、2カ月連続で東京・九段北の靖国神社を参拝し、自らの政権の岩盤支持層だった保守層に健在をアピールした。いち早い活動再開には、今後も党内外で求心力を保ちたい意思が透ける。

 この日午前、靖国神社に姿を見せた安倍氏は記者団の問い掛けに足を止め、「ご英霊に尊崇の念を表するため参拝した」と語った。滞在はわずか15分間だったが、顔つきからは充実の様子がうかがえ、辞任表明時の重苦しい疲労感は薄らいでいた。

 第2次政権発足後、安倍氏が首相として参拝したのは2013年12月の1回だけ。その後は、同盟国・米国の懸念や中国、韓国に配慮し、供物や玉串料の奉納にとどめていた。宰相の座を降り、9月に続く訪問に、自民党関係者は「『申し訳なかった』という思いもあるのだろう」と推し量った。

 靖国参拝によって自身の思想信条の核心を示すことは、保守層の支持をつなぎとめ、菅義偉政権の後まで政界で影響力を残していく上で欠かせない。

 「『そろそろ帰ってきてくれるんじゃないか』と申し上げたら、『当分は帰らないんだ』と(言われた)」

 9月28日、安倍氏も出席した出身派閥・細田派のパーティーで、森喜朗元首相が2人の間のこんなやりとりを披露した。安倍氏は早期の派閥復帰を固辞しているが、会長の細田博之氏は「すぐにでも派閥を受け渡したい」(ベテラン)意向。いずれ「安倍派」に衣替えするのが基本路線とみられている。

 党内最大の98人を擁する派内には「ポスト菅」に意欲を見せる議員が複数おり、それぞれが取り巻きをつくるなど分裂の懸念もつきまとう。重みのある安倍氏が率いることになれば派内はまとまり、菅政権の実質的なキングメーカーとなった二階俊博幹事長を含め「党内外をけん制し、にらみを利かせられる」(細田派関係者)との意味を持つ。

 首相在任中の末期は、迷走した新型コロナウイルス対応などが批判の的となった。内閣支持率は低落したものの、体調不良を率直に明かした退陣劇の直後は急回復し、政治生命を保った形。

 「安倍さんはまだ若い。健康さえ問題なければ、いずれそのリーダーシップを必要とされる時が再び来る」。細田派の閣僚経験者は「再々登板」への期待を隠そうとしない。安倍氏は来夏の東京五輪の開会式でも、森氏の配慮により表舞台に押し上げられる。 (河合仁志)

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