会社に拒まれ…「休業支援金」受け取れない 労働者の嘆き

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 新型コロナウイルスの感染拡大で仕事が休みになり、収入が途絶えた人に支給される国の「休業支援金」を、受け取れない労働者が出ている。受給するには労使が申請書を書かなければならないが、会社が拒むケースや、倒産して手続きできない例があるという。働き手が直接、国に補償を求める制度とされるものの、安全網の役割を果たせていない面がある。

 「貯金でなんとかしたけど、本当にきつかった」

 福岡市の服飾店に勤めていた女性(22)は4月から4カ月間、給料がゼロだった。コロナ禍で店が休みになり、再開後も勤務シフトに1日も入れてもらえなかった。会社の都合で休んだ従業員に支払われる休業手当も、出なかったという。

 同じころ休業支援金を知った。申請書には、会社が本人に対して「指示して休ませたか」「休業手当を支払ったか」を記す欄がある。「どうせ書いてくれない」と空欄のまま郵送した。

 「面接で週5日は入りたいと言って入社できたのに、むちゃくちゃだった。勝手に休みにされたんだから、その分の給料はほしい」

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 労働基準法は会社が自分の都合で従業員を休ませた場合、休業手当を支払うよう義務付けている。これを受けられない人に国が支給するのが、今回の休業支援金。コロナ禍で窮地に陥った働き手を救う特例だ。

 ところが、申し込もうにも会社側が「勤務シフトが決まっていなかっただけ」「指示はしていない」と休業させたことを認めず、申請書の事業主記入欄を書かない事態が起きている。

 勤め先が倒産してしまい、困り果てた人も。連合福岡ユニオン(福岡市)の進藤勇志書記次長は、飲食店に勤めていた福岡県内の20代男性の例を挙げる。

 男性の店は4~5月に休みになった。再開予定の6月、男性が出勤すると既に閉店していた。経営者とは連絡が取れない。休業支援金を申請したが、「会社の記入欄は空欄にせざるを得ず、労働実態の確認もできない。もらえるかどうか」。進藤書記次長は難しさを感じている。

 若い人の労働問題に取り組むNPO法人「POSSE」(東京)にはこの間、受給を巡る約30件の相談が寄せられた。「『自由意思で休んだという認識』と言われた」(不動産会社、30代女性)、「『休業は指示しておらず、予約がない状態が続いているだけ』と説明された」(宴会の配膳業、20代男性)-など、使用者の主張を一方的に押し付けられる例が多い。

 今野晴貴代表は「休むよう指示したのではなく、既に解雇していたから休業に当たらない、と言い張る会社もある。こうなると休業支援金は受けられない。悪質なケースだ」と指摘。今回の制度は大企業で働く人や、少額でも休業手当を受け取った人は対象外で、この点も「非正規の労働者などには影響が大きい」と問題視している。

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 なぜ事業主は従業員を休ませたことを認めず、申請に協力しないのか。

 労働組合や支援団体の見方はこうだ。会社が従業員を休ませたことや、休業手当の不払いを認めて申請書に記入すると、それを見た国に労基法違反と指摘される-。こうした懸念が協力をためらう要因とする。

 厚生労働省はこれについて、「休業手当を支払っていなくても、法に抵触するかどうかの判断には直接影響しない」との考えを示す。それでも警戒は解けていないようだ。

 一方、会社の協力なしに受給できた例もある。

 首都圏青年ユニオン(東京)によると、飲食店に勤める関東の女性は、4月以降の出勤がなかった上、勤め先は申請に協力してくれなかった。そのまま申し込んだが、会社は労働局の審査にも休ませたことを認めなかったという。

 労働局は女性が働いていた店舗の店長に聞き取りを実施。ここで会社都合の休業と確認され、支給が決まった。ユニオンの担当者は「労働局は例外的な扱いとしているようだが、それではいけない。事業主が休業を認めなくても、行政の調査で要件を満たしていることが分かれば、支給する対応を広げるべきだ。そのための統一的な基準も必要になる」と話した。 (編集委員・河野賢治)

 【ワードBOX】休業支援金
 4月から12月末まで、コロナ禍で仕事が休みになった中小企業の労働者のうち、休業手当が出なかった人に国が支給する。金額は休業前の平均賃金の8割で、1日当たりの上限は1万1千円。7月の受け付け開始後、10月18日時点で申請件数は約54万700件、支給決定件数は約33万2700件。労働者が会社に申請書を書いてもらえないまま申し込むと、労働局が事業主に報告を求めて審査する。ただ回答があるまで審査はできず、時間を要するという。

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