中国のSNSで炎上、BTSに流れ弾…背景は 朝鮮戦争巡る式典発言

西日本新聞 社会面 坂本 信博 池田 郷

【あなたの海外特派員】

 世界的に人気の韓国男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が朝鮮戦争(1950~53年)での米韓両国民の「犠牲」に思いを寄せた発言をしたのに対し、北朝鮮軍と共に米韓両軍と戦った中国から反発の声が出ている。「中韓でこの問題はどんな扱い?」との質問が、西日本新聞のワシントン、北京、ソウル、釜山、バンコクの海外特派員が読者の調査依頼にこたえる「あなたの特派員」に寄せられた。騒動の背景には米中対立や南北関係の影もちらつく。

 「両国が共に経験した苦難の歴史と無数の男女の犠牲を忘れない」。BTSリーダーのRMさんは米時間7日、米団体による米韓関係発展への貢献をたたえる賞のオンライン授賞式で、開戦70年を迎えた朝鮮戦争に触れてこう述べた。

 この発言に対し、中国の短文投稿サイト微博(ウェイボ)では10日以降「#防弾少年団辱華(BTSが中国を侮辱)」のハッシュタグを付けた投稿が2万件を超えた。中国では朝鮮戦争への参戦は、米国に対抗して北朝鮮を支援した英雄的行為。「犠牲になったわが国の軍人のことを思え」「BTSが宣伝する商品は買わない」との批判が相次ぐ。

 中国共産党の機関紙・人民日報系の環球時報も「この問題でファンをやめるという声が出た」と報道。中国が不可分の領土とする台湾について「BTSメンバーが以前の取材で国とみなしていた」というインターネット上の声も伝えた。中国メディアによると、中国のBTSファンは数百万人。最新アルバムの売り上げは79万枚に上る。人口14億人の巨大市場だけに韓国側も大きく報道している。

 外交筋は一連の騒動を「米中対立の余波」と指摘する。中国外務省の趙立堅副報道局長は12日の記者会見で「われわれ(中韓)は共に歴史を鏡とし、友好を推し進めるべきだ」と韓国側をけん制。韓国と同盟関係にある米国務省のオルタガス報道官は14日、ツイッターに「肯定的な米韓関係を支持するためのBTSの労苦に感謝する」と投稿し、中国側を当てこすった。

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 韓国側では「BTSの受賞の感想まで中国が検閲している」(韓国紙)との反発も出ており、文在寅(ムンジェイン)政権は困惑の色をにじませる。政治的業績として南北関係を前進させたい文政権にとって米中双方の協力は不可欠で、問題をこじらせたくないのが本音だ。「(BTSの)発言が民族的自負心や歴史的な傷を刺激すれば大きな社会的問題に飛び火する。静かな外交を展開するのが常識だ」。韓国の与党幹部は、沈黙を続ける政府の立場を代弁する。

 韓国には対中関係の悪化で経済的な打撃を受けたトラウマ(心的外傷)がある。韓国が2016年に米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を決定したことに対し、中国は報復措置として「限韓令」を発動。団体旅行客の訪韓や、韓国芸能人の中国での活動を実質的に制限した。

 ただ、中韓の多くの若者は事態を冷静に見ているようだ。北京市内の男子大学生(21)は「米国との関係悪化など政治的な背景があって一部の人がネット上で騒いでいるだけ。中国が侮辱されたとは感じていない」と淡々と話した。 (北京・坂本信博、ソウル池田郷)

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