緊迫する「海の火薬庫」韓国・延坪島を歩く 男性公務員射殺から1ヵ月

西日本新聞 一面 池田 郷

 北朝鮮軍が南北軍事境界線に近い韓国の離島・延坪島(ヨンピョンド)の周辺海域で、韓国人の男性公務員を射殺した事件から22日で1カ月となる。北朝鮮は米国との非核化交渉が暗礁に乗り上げ、6月には開城(ケソン)の南北共同連絡事務所を爆破。一時の融和ムードは吹き飛んだ。過去に南北の軍事衝突が繰り返され「海の火薬庫」と呼ばれる島へ渡ると張り詰めた空気が漂っていた。

 延坪島は、ソウルに近い仁川の港から西へ約120キロの黄海に浮かぶ。人口約2200人の5割超は軍関係者などという。北朝鮮の南西海岸まで約10キロ。展望台の望遠鏡をのぞくと、海岸線に並ぶ平屋や2階建ての建造物が見えた。

 事件後、韓国が近海で射殺された男性の遺体捜索を始めると、北朝鮮は「領海侵犯の即刻中止を」と激しく反発した。北朝鮮は韓国が海上の軍事境界線と主張する北方限界線(NLL)を認めていないからだ。

 南北の軍事的緊張が高まるたびに島内に緊迫感が漂う。韓国メディアが6月、開城の事務所爆破後、北朝鮮軍が島の対岸にある海岸砲の砲門を開けたと報じた。2018年9月、南北首脳の合意に基づき、全砲門を閉鎖するとした取り決めに反する恐れがある。

 島民の脳裏に10年前の恐怖がよみがえる。北朝鮮軍は10年11月、島に砲弾約80発を撃ち込み、民間人を含む4人が死亡。「ドンと音がした直後、職場のパソコン画面が消えた。島は火の海になり、逃げ惑う人々はパニックだった」。高速船発着所に勤める宋英玉(ソンヨンオク)さん(58)は振り返る。

 韓国軍は島に海兵隊を展開し、北朝鮮側の動きを24時間体制で注視する。にもかかわらず射殺事件は防げなかった。背後には南北融和を政治的功績にしたい文在寅(ムンジェイン)大統領の思惑がのぞく。 

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