パリはそろそろマロニエ並木が色づき…

西日本新聞 オピニオン面

 パリはそろそろマロニエ並木が色づき、秋の陽(ひ)を浴びて黄金(こがね)に輝き始めた頃だろうか。石畳を覆う枯れ葉を踏みしめて歩けば、シャンソンの名曲「枯葉」のメロディーが浮かぶ

▼哀愁を帯びた歌声でこの曲を大ヒットさせたフランスの歌手ジュリエット・グレコさんが先月、亡くなった。何度も来日公演を行い、日本のシャンソンブームに火を付けた

▼人生は美しく太陽が輝いていた季節は過ぎ去り、思い出と後悔は北風が枯れ葉とともに忘却の冷たい夜へと運び去る-。パリの人々は今、歌姫が残したシャンソンの一節を思い起こしていようか

▼欧州に新型コロナの第2波が襲来。フランスでは先週、1日の新規感染者数が初めて3万人を超えた。夏に第1波が沈静化し、人々は輝く太陽の下へバカンスに繰り出して人生を楽しんだ結果だろうか

▼フランス政府はパリなど9都市圏で夜間の外出禁止に踏み切った。「枯葉」の原題は「レ・フイユ(葉)・モルト(死んだ)」。深夜までにぎわうカフェやレストランの灯が消えた冷たい夜のパリなどは、さながら「レ・ヴィル(街)・モルト」。グレコさんが「パリの空の下、歌は夜まで流れる」と歌った日常はいつ戻るのか

▼日本でも「Go To キャンペーン」で多くの人が旅行や飲食に繰り出している。人生に楽しみは必要だが、欧州を他山の石とし、手洗いと口元を覆う「フイユ(一枚)」を怠りなく。

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