非正規格差判決 労働の実態見据え是正を

西日本新聞 オピニオン面

 非正規の立場で働く人々にとって一歩前進の面もある司法判断だが、これで十分というわけにはいかない。政府や企業は「同一労働同一賃金」を実現するため、正社員との待遇格差の是正を着実に進めるべきだ。

 最高裁は先週、日本郵便の契約社員らが扶養手当の支給などを求めた3件の訴訟と、東京メトロ子会社の契約社員らが退職金支給などを求めた2件の訴訟で、それぞれ判決を出した。

 前者では、年末年始手当や夏期冬期休暇などを含む五つの手当・休暇について「不支給は違法」と明示した。有期雇用による不合理な処遇を禁じた旧労働契約法(現パートタイム・有期雇用労働法)に基づく判断だ。

 この訴訟は東京、大阪、佐賀の3地裁で起こされ、高裁段階では支給の当否の判断が分かれていた。最高裁は、契約社員であっても相応に継続的な勤務が見込まれる場合は扶養手当の支給が妥当とし、郵便集配業務の特殊性に応じた手当・休暇も正社員と同等の支給を命じた。

 郵便事業の多くを契約社員に頼る日本郵便の実態に即した判断で、同社は制度改正に乗り出すという。判決はあくまで被告企業に対するものだが、雇用の在り方に共通点がある他の企業も警鐘と受け止めるべきだ。

 一方、最高裁は地下鉄の駅売店で働く契約社員の退職金と大阪医科大のアルバイト職員の賞与については「不支給でも不合理とは言えない」との判決を示した。正規職員との職務内容や責任の相違、使用者側の裁量権などを考慮した判断だった。

 ただ留意したいのは、職務に実質的な違いがない場合は「不合理に当たることがあり得る」と補足した点や、裁判官の1人が一定の退職金支給を認める反対意見を示したことだ。労働の実態が待遇の物差しであり、正規・非正規の別や使用者の都合で安易な線引きは許されない。判決はそうした基本ルールを強調した上で、公正かつ柔軟な待遇を促しているからだ。

 国内の非正規就業者は昨年、2165万人まで増え、労働者全体の約4割に達した。新型コロナウイルス感染が広がった今年は減り続け、8月時点では2070万人になった。経済が停滞する中で、弱い立場の労働者が雇用の調整弁として扱われ、日々の暮らしも立ち行かない苦境に置かれている。

 菅義偉政権が前政権から継承する働き方改革では、終身雇用や年功序列から脱した多様な雇用の創造も求められる。その前提が格差是正だ。政府は最高裁判決を個別の問題として矮小(わいしょう)化することなく、いま一度雇用の実態を広く正確につかみ、取り組みを強化すべきである。

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