「ようやく舞台に」ダンスや演劇…福岡から多彩にライブ配信

西日本新聞 もっと九州面 藤村 玲子

 新型コロナウイルスの影響を受け、表現の場が減っている地域の劇団や演奏者などに舞台を提供するイベント「ジャパン・ライブエール・プロジェクトinふくおか」が10月下旬から、福岡市などの各会場と、オンライン配信で始まる。音楽、ダンス、演劇、伝統芸能で10公演が組まれ、演者やスタッフは約300人に上る。関係者たちは「ようやく舞台に立てるのがうれしい。元気を発信したい」と意気込んでいる。

 「ダンスには人間性を高める学びが多い。初心者こそ来てほしい」

 福岡市内で社交ダンス教室の講師を務める福島優一(まさかず)さん(42)はそう力を込める。プロジェクトの一環で、今回初めて「福岡ペアダンスフェスティバル」(11月15日)を企画した。アルゼンチンタンゴやサルサなど7組のダンサーが出演し、観覧者に踊りの指導も行う。

 福島さんは大学時代に社交ダンスと出合い、切磋琢磨(せっさたくま)して技術を高めるところに魅力を感じた。教室は4月以降、2回の休止期間を挟んだ。生徒約40人は70代中心で、今も教室には半数しか戻っていない。だからこそ、前を向きたい。「マスク着用と消毒を徹底して、『密』なダンスを楽しんで」と語った。

 障害者たちの芸術活動に取り組む認定NPO法人「ニコちゃんの会」(福岡市)は来年1月20日、ビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使って演劇公演を「すっごい演劇アートプロジェクト」の中でライブ配信する。演じるのは、70歳以上の高齢女性や脳性まひなどの障害がある人たち。今夏予定していた公演は中止になった。感染リスクから対面稽古ができないため、パソコン操作に四苦八苦しながら、画面越しの稽古に取り組んでいる。活動に協力する市文化芸術振興財団の宮村友里江さん(34)は「オンラインならではのハプニングも楽しんで」と話す。

 12月20日には、福岡市民会館で古典芸能に子どもたちが挑戦する「伝統芸能博 集まれ!」が開かれる。福岡を拠点に活動する能楽師や筑前琵琶奏者らが出演し、それらを学ぶ子どもたち数十人も演技や演奏を披露する。能楽師の白坂(しらさか)保行さん(52)は「久しぶりの舞台で子どもたちも張り切っている」と言う。

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 文化庁などが主催するジャパン・ライブエール・プロジェクト。公募に応じた27都道府県の文化芸術団体が連携し、独自のプログラムを行う。事業費は5千万円。出演料や裏方の人件費、会場費や感染対策費用などに充てる。

 福岡の新規感染者数は落ち着きを見せつつあるが、芸術文化活動を再開できていない個人や小規模団体はまだまだ多い。プロ、アマチュア、スタッフ、次代の子どもたちを広く支援し、一般市民に「ライブ」の楽しさをまた体感してもらうのが眼目だ。

 福岡開催の統括プロデューサーを務める水上徹也さん(62)は「数十件の公演がキャンセルになった音楽家もいる。イベントを企画する私自身も、30件以上の公演が中止になり、本当にこたえた。当たり前のように芸術鑑賞ができ、観客と楽しんでいたことが、実は当たり前じゃなかったと気づかされた」と振り返る。

 最後に、仲間の思いをこう代弁した。「いつか必ずゴールは見えると信じて、芸術イベントの楽しさを伝えたい」 (藤村玲子)

【事前にご確認を】

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、イベントは中止・延期される場合があります。お出掛けの際は電話やネットでご確認ください。また、国や自治体の要請に従ってください。

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