愚痴から始まった“会話” 1年続いた不倫の末に…

西日本新聞

復刻連載・夫婦でいる理由(わけ)<5>

 1997年、不倫を描いた小説「失楽園」がベストセラーになった。夫、妻という立場にありながら、恋におぼれる中年男女。その姿にあこがれる人たちを指して「失楽園症候群」なる言葉まで登場した。

 福岡都市圏にあるコンピューター関連会社に勤める努さん(38)の場合、憧れだけでは終わらなかった。

    ×   ×

 相手は、取引先の会社に勤める同い年のキャリアウーマン。2年前の春、接待の席で知り合った。既婚者だった。子どもはいない。

 努さんには小学生の一人娘がいるが、妻は働いている。2人には「共働き」という共通点があった。

 「家事は手伝うんですか」

 「分担してやってます」

 「理想の夫ですね。私のだんななんて、全く協力してくれないんですよ」

 そんな話をしているうちに意気投合した。アドレスを教えてもらい、翌日からメールのやりとりが始まった。

    ×   ×

 まだ日が浅いころは、例えばこんなことを書いた。

 「娘が生まれてからというもの、仕事と育児に追われて夫婦でゆっくり過ごしたことがないんですよ。最近は会話もなくて。たまに話しても子どものことばかり」

 すると、こんな返信メールが届いた。

 「結婚生活も長くなれば、話すネタも尽きてきますよね。うちなんか、夫は塾の講師だから、午後出勤で深夜にしか帰ってこない。顔すら合わせない毎日です」

 家庭の愚痴から始まった画面上での“会話”は弾んだ。話題も趣味に仕事にと広がっていった。1カ月後、「今度、2人で飲みにいきませんか」とメールで誘った。返事は「OK」だった。

 約1年、関係は続いた。

 残業や接待を装って夜遅く帰る日が増えた。出張と偽って外泊したこともあった。分担していた家事はほとんど妻任せになった。

    ×   ×

 そんなある日、また午前様になった。妻と娘が寝ている布団に入ろうとしたとき、妻の背中が小刻みに震えていた。すすり泣きが聞こえた。

 「妻はうすうす感じていたようです。それでも何もいわず、家事や育児に頑張ってくれていた。妻と向き合う努力もせず、現実から目を背けていた自分が恥ずかしくなった。心の中でわびました」

 彼女とはきっぱり別れた。できるだけ早く帰宅し、休日は親子3人で出かける機会を増やすようにした。

 「最近は、それまでほとんどしなかったお互いの職場の話もするようになりました。その日の出来事を持ち出さないと、話題なんて、すぐ底をつきますから。でも意外でしたね。結構いいアドバイスがもらえたりするんですよ」(文中仮名)

 この記事は1999年4月1日付で、文中の年齢、肩書、名称などの情報はすべて掲載当時のものです。

    ◇    ◇

 21世紀に入って20年が過ぎた。この間、女性の社会進出が進み、男女の関係も変化したように見える。では、夫婦のカタチは…。1999年の連載「夫婦でいる理由(わけ)」を読み返してみると、その答えが見えてくる。

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